世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月4日

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 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、2月28日付の同紙で、米国の製造業での職の喪失は貿易のせいであるというトランプの考えは基本的に間違っている、と述べています。要旨は以下の通りです。

(iStock)

 トランプが大統領選挙で勝った一つの理由は、雇用を失った労働者の怒りを代弁したことであるが、貿易が雇用の喪失の主要な原因であり、貿易協定を再交渉すれば中産階級を救えると言った。トランプは世界貿易が米国の雇用を奪ったとの、誤った議論で選挙を戦ってきた。

 トランプの首席戦略官であるスティーブン・バノンは、この経済面での国家主義を、グローバル化の犠牲になる労働者とグローバル化から利益を得るエリートの戦いという本格的なイデオロギーに拡大した。

 しかし数字を見れば、トランプとバノンが誤った戦いをしていることが明らかである。製造業の雇用はここ10年確かに減少したが、主たる理由は貿易ではなく、オートメーションである。
2015年にBall State大学のHicksとDevarajの二人の経済学者は、2000年から2010年の間に、製造業の雇用が米国の歴史上最も多く減少したと発表した。報告によれば、製造業の雇用減少の87.8%はオートメーションによる生産性の向上の結果であり、貿易による現象は13.4%であった。産業別に生産性向上による雇用喪失の割合を見ると、自動車が85.5%、鉄鋼その他の一次金属が76.7%、紙製品、93.2%、繊維、97.6%であった。

 トランプはラストベルト(Rust Belt:旧式の産業工場を抱える米中西部と北東部の重工業地帯)の苦悩の原因を誤って理解することで、支持者に二重の危害を加えている。一つは機械で置き換えられた仕事を人間が取り返せるという誤った希望を与えたことである。残念ながら経済の歴史は逆戻りしない。しかしより深刻なのは、トランプが人々に職業訓練を避ける口実を与えていることである。専門家は、これから現在の雇用の半分以上を奪う可能性のあるオートメーションの津波が襲うと予測しており、それに備えるには職業訓練が必要である。

 トランプは、トランプを信じて以前の仕事が戻ってくると考え、次の雇用の喪失のラウンドでひどい目に合うミシガン、オハイオやウェストバージニアの労働者に何と言うのだろうか。

出 典:David Ignatius ‘Trump is selling snake oil to the Rust Belt’(Washington Post, February 28, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/trump-is-selling-snake-oil-to-the-rust-belt/2017/02/28/a0074f74-fdf9-11e6-8f41-ea6ed597e4ca_story.html?utm_term=.f3f248523a23

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