シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月10日

»著者プロフィール
閉じる

小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 ここ数年、待機児童の問題がクローズアップされると、これまで保育に熱心ではなかった自治体でも首長が保育政策の優先順位をあげ、対策に躍起になっている。しかし、いくら急ピッチで保育所を新設し、定員を拡充しても限界があり、追いつかない。限られた財源で保育所整備にだけ投資するわけにもいかない事情もある。特に、0歳児を1人預かるコストが月に40万〜50万円もかかる場合もあり、自治体は頭を痛めているところだ。

 そのため、多くの自治体の保育課が「行政としては、育児休業の権利があるのですから、それを行使していただきたい。育児休業をとって安心して職場復帰できるよう1~2歳児を拡充する」と口を揃える。その大義名分とは裏腹に、保育課長らが「財政を考えると、コストのかかる0歳児保育を増やしたくない」と本音を漏らす。

 ある自治体では、新規開設保育所を運営する事業者を公募する時に、表立っては言わないが「0歳児保育をしないとプレゼンしたほうが有利になる」(関係者)という徹底ぶりだ。待機児童解消に積極的に取り組む自治体の地方議員も「もうこれ以上できないというほどやっている。うちの自治体にこないで、待機児童の少ない郊外に住んで欲しい。なんとか保育ママなどを活用して家庭で子どもを見ることができないか」と、さじを投げたい状態だ。

需要予測のミスマッチ

 しかし、その0歳児を増やしたくないということが、そもそも需要予測のミスマッチを起こしているのだ。

 厚労省が2008年8月に行った「新待機児童ゼロ作戦に基づくニーズ調査」では、2017年度の潜在サービスニーズ量が推計されている。ひとり親家庭、フルタイム夫婦、フルタイムとパートの夫婦、パート夫婦の認可保育所の0~2歳の利用意向は42.2%とされていた。

 2008年9月にリーマンショックが起こり、さらに需要は増えているだろう。保育を必要とする共働き世帯は予想以上に増えているはず。総務省「就業構造基本調査」(2012年)によれば、未就学児を育児している女性で無職の人のうち、就業を希望している人は170万人に上る。安倍政権は保育の受け皿を50万人用意すると言ったが、根本的にそれでも足りないのだ。

 そもそも国が掲げた「50万人」というのは、各自治体が試算した定員拡大の必要量を積み上げたものである。その試算方法は自治体によって異なるが、独自のニーズ調査をしたうえで、「子ども子育て会議」などを経て人口や就労状況を加味して利用率が検討されて、定員が決まっていく。ところが、その算出方法が適切でないことがあるのだ。

関連記事

新着記事

»もっと見る