シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月10日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 ある自治体では、独自のニーズ調査で0歳児の利用希望が人口に対して6割であったが、「それでは多すぎるだろう」というだけの理由で3割に設定された。他の自治体でも、0歳の利用希望が5割だったが、「育児休業を前倒しして0歳児で預けるケースが目立つから、1歳の枠が増えれば0歳で預ける人が減るだろう」として、利用希望率を2割に設定するなど、まさに適当な「あんばい」がかけられている。これが、そもそも大きな間違いで、実際にはニーズ調査通り、5~6割の0歳児保育の利用希望があるのではないか。

 3月31日に厚生労働省から発表された「2016年4月の保育園等の待機児童数とその後(2016年10月時点)の状況について」によれば、4月の待機児童数は0歳が3688人、1~2歳が1万6758人だったが、10月になると0歳が2万2007人、1~2歳が2万2183人になっており、0歳だけで1~2歳と同等の数に膨らんでいることが分かる。

育児休業を取得できる恵まれた正社員

 こうした需要予測のミスマッチが起こるのは、自治体が前提に考えているのは主に、正社員のなかでも“育児休業を取得できる恵まれた正社員”となっており、非正規雇用労働のことが抜け落ちているからだ。非正規雇用が出産期の女性労働者の全体の半数を占めるようになっているが、非正規のほとんどが育児休業を取得できないからだ。すると、労働基準法で定められる産後休業8週だけで職場復帰せざるをえない。

 冒頭の茜さんも、「1歳まで育児をしてから預けるなど夢のまた夢。0歳のうちに子どもを保育所に入れなくて済むものなら入れたくなかった」と、毎日後ろ髪をひかれる思いで子どもを保育所に預けて仕事にでかける。この、女性の非正規雇用の増加に伴う0歳児保育の必要性が無視されているため、待機児童の減少を難しくさせているに他ならない。育児休業がどれだけ正社員のためのものである制度なのかが見過ごされている。

 

  
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