シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月11日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 非正規雇用労働者がどれだけ育児休業を取得しているのか。育児休業給付金の初回受給者数を見ると、2015年度の受給者数全体は30万3143人となる。そのなかでも非正規労働を指す「期間雇用者」(期間を定めて雇用される労働者で有期契約労働者とも呼ばれる)の取得者数は、2005年度の2242人から年々増えてはいるものの、2015年度で1万731人しかいない。育休給付金を受給している期間雇用者の割合は、全体の3.5%程度。ここから事実上、非正社員では育児休業を取ることができない状態だということが分かる。

期間雇用者は育休をとるハードルが高い

 大きなネックとなってきたのは、これまで育児介護休業法で期間雇用者が育休をとるハードルが高かったことにある。要件が、①同一の事業者に1年以上雇用されていること、②子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあること、③子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者を除く――で、特に、②の雇用継続の見込みについて、事業者が「景気にもよるから先のことは分からない」とすれば見込みが曖昧となるため、要件をクリアすることが難しかった。

 そうした問題を受け、2017年1月1日から施行された改正育児・介護休業法では、期間雇用者の育児休業を取得できる要件が緩和された。改正法では、①同一の事業者に1年以上雇用されていること、②子が1歳6カ月になる日の前日までに、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと、とされ、雇用継続の見通しが「わからない」など曖昧でも育休を取ることができるようになった。ただ、これで有期契約労働者にも育休の間口が広がるように見えるが、実際に増えるかどうかは疑問だ。

 総務省「就業構造基本調査」(2012年)では、雇用契約期間の定めがある非正規雇用労働者について、1回当たりの雇用契約期間を見ると「6カ月超1年以下」が最多で41.1%を占め、嘱託、パート、契約社員などが主な雇用形態となる。派遣社員やアルバイトでは「1カ月以上6カ月以下」が多く、それぞれ59.5%、41.2%だった。更新の有無について、「更新あり」は約795万人、「更新なし」は約239万人だった。「更新あり」のうち、1回当たりの雇用契約期間が「1カ月未満」と「1カ月以上6カ月以下」では「10回以上」がそれぞれ31.2%、35.2%だが、「6カ月」を超えると、更新回数が「3~5回」が最も多いが、次いで「1回」となっている。

 以上のことから、そもそも育休対象となる要件の「1年以上雇用される」こと自体が不透明な状況と言える。そして、もし1年以上雇用され続けるなかで妊娠しても、契約期間が短ければ、妊娠の報告をした後で契約が打ち切られてしまい出産前に職を失い育休を取る権利もなくなりかねない。もともと、企業が非正規雇用労働を選択する動機のトップが「賃金の節約のため」(32.9%)となっている(厚労省「就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況(事業所調査)」2014年)。そうしたなかで、非正規雇用労働者に育休を取得させてまで雇用を継続しようというモチベーションが高まるとはいいにくいのではないか。

 妊娠・出産期に当たる20~40代の女性の雇用といえば、半数が非正規だ。総務省「労働力調査」(2016年、速報)によれば、25~34歳の非正社員比率は39.5%、35~44歳で同53.8%に上る。くわえて、25~44歳の女性の「自営業主」は約33万人となり(総務省「2012年 就業構造基本調査」)、育児休業は最初から対象外だ。25~44歳の非正規雇用労働者の実数(2016年)の約499万人と合わせると約532万人となり、同世代の正社員数とほぼ同数となる。

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