WEDGE REPORT

2017年4月4日

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 市民後見人が活躍するには、地域の専門職による支援体制も欠かせない。大阪市では、養成講座で講師を務めた弁護士や司法書士、社会福祉士が週2日、専門相談の機会を設けるなど、専門職が近い距離で市民後見人を支援する。被後見人の危篤時などにも対応できるよう、緊急時には24時間で社協職員と連絡が可能な体制も整えている。

 時間が経つに連れて高齢者の状態は変化していくので、専門職の定期的なサポートは欠かせない。大阪弁護士会、リーガルサポート大阪支部、大阪社会福祉士会という「三士会」の組織的な協力が、市民後見人を生かす仕組みを支えている。「行政が主体となり専門職らを交えた『大阪市後見的支援研究会』を市役所内に06年に設けた。市民後見人を支えるための連携のあり方を継続的に模索してきたことが実った」(岩間教授)。

 また、社協が専門職によるバックアップ体制を構築しているため、家裁の信用も得ている。「毎年、家裁の裁判官とマッチングに携わる学識経験者や専門職、社協職員が懇談会を開き、市民後見人に適した事案の協議を重ねることで、家裁から市民後見人の推薦依頼を継続的に頂いて来た」(大阪市成年後見支援センターの伊関玉恵所長)。

 最高裁判所家庭局の西岡慶記裁判官は「自治体が責任を負い、なおかつ専門職の支援を得ている環境であれば、裁判所としても市民後見人を選任しやすい。社協と家庭裁判所が市民後見人に割り当てる事案のイメージを共有することが大切だ」と語る。

 大阪市社協は後見報酬や監督報酬を得ておらず、財源は市からの毎年の委託金約5000万円のみだ。被後見人の情報を、社協と家裁が双方向に共有する大阪市のモデルは、多くの市区町村にとって参考になるはずだ。

 こうした大阪市の市民後見人養成の仕組みは大阪府全域へ展開されつつある。現在21市町で同一の活動基準を運用。市民後見人が転居しても、市民後見人を養成している転居先自治体で活動できる。現場が抱える危機感を共有し、自治体の壁を越えて連携を築いている。地域の連携で「後見力」は確実に上がるが、それも市民のボランティア精神があってこそだ。

*「 過熱する高齢者見守りビジネス最前線認知症700万人時代に備える(PART3)」へ続く(4月5日公開予定)

【シリーズ:認知症700万人時代に備える】
PART1:東京23区の成年後見格差、認知症への支援を急げ
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・前編:品川モデル
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・中編:「品川モデル」構築のキーマン・インタビュー
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・後編:大阪モデル
PART3:過熱する高齢者見守りビジネス最前線

  
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◆Wedge2017年3月号より

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