したたか者の流儀

2017年4月8日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 パリ市長は女性だ。2月末、来日して小池百合子知事を東京都庁に表敬訪問した。初お目見えということになる。近隣諸国や大国の首相や大統領であれば日本人になじみは深い。やれサミットだ、G20だといって名前も出てくることが多いが市長となると少し違う。

 中国やドイツは大都市の市長になることは、主席や首相の登竜門となることもある。フランスのジャック・シラク大統領はパリ市長の経験者だ。日本人には想像出来ないがフランスは、地方政治と国政に二つのポジションを持つことができる。どこかの町の市長のまま大臣に就任することも出来る。また、それが粋だと思うきらいもある。シラクは、首相ながらパリ市長を兼務している時期もあったと記憶している。

(iStock)

 ジャック・シラクの流れを断ち切り、社会党系のパリ市長として勇名をはせたベルトラン・ドラノエは自らゲイであることを表明している。荘厳なパリ市庁舎を訪問すると、普通は女性の秘書がつくが男性が秘書役をしていた。

 その点以外は、全くの普通でジャン・コクトーを思わせる容姿の有能な市長であった。首都という坩堝では、そんなことが日常に起こるのだろう。パリに限らず大都市の生理現象かもしれない。東京も国政では自民党政権が安定的に続く中、美濃部亮吉都知事や青島幸男知事が誕生するなど、風雪を経験している。良かったのか悪かったのかは別にして、非オーソドックスな形で人気者が当選していた。

 最近では二代続けての任期中の退任を受けて、登場した小池知事の動きが注目されている。この勢いで行けば小池首相も夢ではないという話もちらりと聞こえた。大都市住人の移り気を差し引くと将来のことは全く読めないが、メディアに登場する頻度はきわめて高い。オリンピックと豊洲問題を抱えているので当然かもしれないが何らかの意図もあるのだろう。

 そんな小池知事のところに、パリ市長のアンヌ・イダルゴがやってきたのだ。2024年の五輪を目指しているからであろうが、二人の会談の様子がニュースで流れた。舛添要一知事であれば、メディアは黙殺したかどうか。

 名前や容貌のとおりスペイン系フランス人と思ったが、実はスペイン生まれのスペイン人で、フランコ独裁から逃れて家族でフランスに移住したようだ。国籍取得は14歳の時だそうで、フランス国籍ながら成人してスペインの国籍も再取得しているそうだ。

 ミッテランの子飼いオブリー労働大臣に仕えた経験もある労働問題の専門家で前市長ドラノエ時代、パリの助役も務めている。初の女性としてパリ市長に当選したのは、三年前で55歳の時だ。

 小池知事も初の女性都知事であり、話が弾むかもしれないが、フランス語の通訳を介して話をしていた。フランスの政治家でも有名な官僚養成機関ENAを出ていると100%英語で用は足りるとすれば、彼女はエナルクではないと思う。労働基準監督畑だそうだ。

 日本で社会党というと小池知事とはかなり違うが、フランスでは中道左派ということだ。バラの花をシンボルにするのがフランス社会党で、中道左右の中身はあまり変わらず、バラの花が好きな人たちが社会党だという説明が一番適切となる。

 同性愛の市長の次は、スペイン生まれでスペイン国籍を持つ市長ということで、日本人からすると驚いてしまうが、流行のダイバーシティーの体現に過ぎないとパリジャンやパリジェンヌは考えているのだろう。

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