中東を読み解く

2017年4月5日

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“ロシアのヒスパニック”問題が背景に

 プーチン政権が今回のテロを契機に見直しを迫られているもう1つの問題がある。それは“ロシアのヒスパニック”といわれる中央アジアからの移民の問題だ。米国で急増するヒスパニック系の不法移民問題に擬えた表現だ。

 ロシアの最下層の労働者は中央アジアのウズベキスタン、タジキスタン、キルギスなどからの移民だ。イスラム教徒が多い。こうした移民は建設作業員や飲食店の下働き、タクシー運転手などの職に就き、低賃金で長時間労働の担い手だ。ロシア経済を下支えしていると言ってもいい。こうした移民は現在、出稼ぎも入れると、数百万人にも達している。

 旧ソ連邦の一員だった中央アジア諸国からロシアに入国するのに査証(ビザ)は必要ではない。移民が増えているのはこのように容易に入国できることも要因だが、仕事はほとんどが不法労働だ。中央アジアからの移民に対して、白人のロシア人極右集団が外国人排斥を掲げて暴行を働くケースも増え、新たな社会問題になっている。

 キルギス出身者が起こした今回のテロの背景には複雑で屈折した移民事情が影響しているのかもしれない。フランスやベルギーで続発したテロの一因はイスラム系移民やその子供たちが社会から阻害され、過激化したことだった。同じことがロシアでも起こっているのではないか。
 
プーチン大統領は来年3月の大統領選で4度目の当選を狙っているが、サンクトペテルブルクのテロはそうした思惑を台無しにしかねない。プーチン氏の再選戦略に移民問題が暗い影を落とし始めた。

  
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