シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月12日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 マタハラが「点数が足りなくて保育所に入れない」という状況に追い込む。連合が妊娠中の女性についてのハラスメントの状況をまとめた初の大規模調査「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」(2013年5月)では、4人に1人がマタハラに遭っていることが分かった。ハラスメントを受けた際の対応として、「諦めて仕事を辞めた」割合は、非正社員では正社員の約2倍にのぼる。第3回調査(2015年8月)で、マタハラについて「状況の変化を感じない」は63.5%で、半数以上が改善を感じないという状況だ。

 国立社会保障・人口問題研究所が5年おきに行っている「第15回出生動向基本調査」を見ると、1985年~89年調査から2005年~09年調査まで一貫して、働く女性のうち第1子の出産を機に「出産退職」している割合が約6割だった。最新調査の2010~14年でようやく5割を切る46.9%になった程度で、女性の置かれるトレンドが30年と変わっていないことが分かる。

 連合の「働く女性の妊娠に関する調査」(2015年2月)では、「妊娠後に、その当時の仕事を続けたか、辞めたか」という問いに対して、正社員・正職員でも51.9%が「辞めた」と答え、契約社員では69.7%、パート・アルバイトでは73.6%もの割合で「辞めた」と答えている。そのうち、約半数が「家事育児に専念するため自発的に」を理由にしているが、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさから」が21.1%、「仕事を続けたかったが、職場で安心して出産まで過ごせないと考えたから」が16.8%、「仕事を続けたかったが、妊娠を機に解雇やパートへの変更を求められるなど不利益な取り扱いを受けたから」が7.2%だった(複数回答)。この調査結果から見ても、少なくても2割程度の女性はいやおうなく辞めている。

女性たちの泣き寝入りに甘んじている数字

 マタハラによって、正社員からパートなどへの労働条件の不利益変更を余儀なくされるケースも後を絶たない。都道府県労働局の「雇用均等室」(16年4月からは「雇用環境・均等部(室)」)に寄せられた「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱い」の相談件数は、2013年度の3663件から2015年度は4776件に増加している。無職の状態で出産し、乳児を抱えての就職活動は困難を極めるため、最初から諦めているという潜在待機児も多いはず。

 マタハラこそが、もっとあるはずの潜在需要を覆い隠している。待機児童に「補助金のつく保育施設に入っている」「育休中」「求職活動を休止」などを含めるかどうかのカウント方法が自治体ごとに異なることで潜在的待機児童があると注目され、厚労省も定義の統一化を図っている。2016年4月1日時点で潜在的待機児童は6万7000人とされるが、まだまだ女性たちの泣き寝入りに甘んじている数字だろう。失業してしまい最初から諦め、子どもの成長を待って求職する女性も決して少なくはない。マタハラに遭わず保活できるようになれば、もっと待機児童は増えていくのではないだろうか。

 

  
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