シリーズ「待機児童はなぜ減らないのか?」

2017年4月14日

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小林美希 (こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト

1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て2007年2月からフリーのジャーナリスト。「ルポ看護の質〜患者の命は守られるのか」「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)、(岩波新書)「ルポ保育崩壊」(岩波新書)と「ルポ母子家庭」(ちくま新書)「ルポ“正社員”の若者たち」(岩波書店)、「看護崩壊」(アスキー新書)、「ルポ職場流産」(岩波書店)、「ルポ産ませない社会」(河出書房新社)など

 親のワークライフバランスが図られ、延長保育や土曜保育などを使うことが減って子育ての時間が増えることは理想だ。しかし、残業規制を巡って経済界が「繁忙期は月100時間の残業の例外」という過労死ラインを超えた残業時間を主張する現状から、長時間労働を是とする企業体質はすぐには変わらないことが透けて見える。そうした現実からすると、延長保育や休日の保育、そして0歳児保育の実施が実現されなければ、親の雇用が奪われてしまいかねず、保育所の柔軟な運用なしに親の雇用は守られないのだ。

0歳児保育の枠こそ増やすべき

 妊娠・出産・育児期の女性の雇用情勢からすれば、0歳児の枠こそ増やしていかないと、待機児童の解消にはつながらない。ただ、いくら急ピッチで保育所を新設していっても限界がある。私見であるが、保育所整備が追い付かない間の時限的な策のひとつとして、育児休業給付金の支給を例外なく就業継続を希望する全員に拡充してしまう方法も考えられるのではないだろうか。

 厚労省によれば、育児休業給付金の平均支給額は月額で約13万円。0歳児を1人受け入れる際のコストが月40~50万円ほどかかるとすれば、0歳児枠1人分の財源で約3人の育児休業給付金を支給できると筆者は考える。0歳で保育所に入ることができなくても現物給付が叶えば、安心して子育てする機会を得る、就業継続を諦めずに割高の認可外に預けることができるようになるなど、今より道が開けるはず。出産を機に半数が辞める現状を食い止める一案にはならないだろうか。

 「一億層活躍」や「女性活躍」の実現のため、保育所が本当に必要なだけ整備されるまでの何年間かでも、たとえマタハラに遭い「妊娠解雇」されたとしても育児休業給付金を支給するなど、社会構造が変わった今、大胆な政策転換が必要だ。

 2016年4月の0歳児の保育所などの利用数は、13万7107人。0歳児の数そのものは96万7100人。仮に、0歳児の利用希望が6割だとすると、合計で58万260人が保育を必要とする。育児や次の就業への準備に充てるため、残りの約44万人分を育児休業給付金(月13万円)で賄ったとすると、単純計算で年間で約6900億円かかるが、女性の就業継続が叶えばマクロ経済への効果は大きい。内閣府は2011年時点で、女性の潜在労働力342万人によって雇用者報酬総額が7兆円増加する可能性を示している。

 

  
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