ちょいとお江戸の読み解き散歩 「ひととき」より

2017年4月21日

»著者プロフィール
閉じる

牧野健太郎(読み解き) (まきの けんたろう)

ボストン美術館と共同制作した浮世絵デジタル化プロジェクト(特別協賛/第一興商)の日本側責任者。公益社団法人日本ユネスコ協会連盟評議委員・NHKプロモーション プロデューサー。浅草「アミューズミュージアム」にてお江戸にタイムスリップするような「浮世絵ナイト」が好評。

[執筆記事]
閉じる

近藤俊子(構成/文) (こんどう としこ)

編集者。元婦人画報社にて男性ファッション誌『メンズクラブ』、女性誌『婦人画報』の編集に携わる。現在は、雑誌、単行本、PRリリースなどにおいて、主にライフスタイル、カルチャーの分野に関わる。

[執筆記事]

 お江戸の木造りの小さな橋が見えます。雪が降っているようです。左に掲げられた看板は、何を意味するのでしょうか?

歌川広重「名所江戸百景 びくにはし雪中」Photograph © 2016 Museum of Fine Arts, Boston. All Rights reserved. William S. and John T. Spaulding Collection,1921 21_10445
①(上)、②(左下)、⑧(右下)

冬のお江戸は焼き芋の香り

 「名所江戸百景 びくにはし雪中(せっちゅう)」(①)。この絵でまず目に飛び込んでくるのは、左に掲げられた「山くじら」(②)の大きな看板です。山くじらは、猪(いのしし)の肉、別の名は牡丹(ぼたん)肉。この店は牡丹鍋で人気の「尾張屋」さんといわれています。当時、表向きは食べられていなかった獣肉ですが、実は「薬喰(くすりぐ)い」と称し、滋養をつけるという名目で肉を食べる人々もいました。他に鹿肉(紅葉肉)、馬肉(桜肉)も食べられていたとか。その尾張屋さんはこの浮世絵のスポンサーだったのでしょうか。安政5年(1858)に描かれた歌川広重さん(⑧)のヒット・シリーズの中の一点です。

 さて、タイトルのびくに(比丘尼)橋は、鍛冶(かじ)橋のすぐ近くにあった小さな橋。今でいうなら東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅近くの高速道路が走っている周辺に位置し、JRの線路を挟んだ向かいには東京国際フォーラムがあります。この雪の中を行くのは「おでん燗酒屋さん」でしょうか。「おでん燗酒~、甘いと辛い~」という呼び声のおじさんが、今しも渡ろうとしているのがびくに橋です(③)。

 橋を渡った右手には江戸城の堀の石垣(④)が見えます。さらに遠くに見える火の見櫓(やぐら)辺り(⑤)は南町奉行所でしょうか。ちょうど数寄屋橋御門の方向、今なら、有楽町駅の中央口の前付近、数寄屋橋交差点を見ていることになります。

④(左)、⑤(右)

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る