BBC News

2017年4月10日

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エジプト北部タンタとアレクサンドリアで9日、キリスト教の一派コプト教の教会で相次いで爆発があり、少なくとも44人が死亡した。アブドル・ファッター・アル・シーシ大統領は、3カ月間の非常事態を宣言した。同宣言によって政府は、令状なしの逮捕や家宅捜索が可能になるが、施行には議会承認が必要。

爆弾攻撃はキリスト教の重要な節目、イースター(復活祭)の1週間前にあたる「しゅろの日曜」(キリストのエルサレム入場を記念する)を狙ったものとみられる。

過激派勢力のいわゆるイスラム国(IS)が犯行声明を出している。ISはこのところ、エジプト国内でコプト教信者を狙った攻撃を重ねており、今後も継続すると表明している。

連続攻撃を受けて国防関係者会議を招集したシーシ大統領は、大統領府で会見し、イスラム聖戦主義者に対する戦争は「長く苦しい」ものになり、非常事態はすべての「法律上、そして憲法上の措置」を踏んだ後に、施行すると説明した。大統領は議会で過半数の支持を得ている。

大統領はこれに先立ち、攻撃を受けて、「不可欠で重要なインフラ」を守るために国内各地に軍の配備を命令した。

ISによると、2カ所の爆弾攻撃は2人の自爆によって実施された。

保健省によると、タンタの聖ジョージ教会で午前の礼拝中に爆発があり、27人が死亡した。その数時間後には警察が、アレクサンドリアの聖マルコ教会に入ろうとした自爆犯を制止。男は教会の外で自爆し、警官数人を含む17人が死亡した。

エジプトでは人口の約10%がキリスト教徒。常に差別と迫害の対象だと訴えるキリスト教徒への支持表明を目的に、ローマ法王フランシスコ1世は月末にカイロ訪問を予定している。

BBCのアラブ問題編集長セバスチャン・アッシャーは、エジプトの一部でイスラム聖戦主義が激化するなか、キリスト教徒たちの不安は募っているし、今回の攻撃でさらに警戒感が増すだろうと指摘する。

エジプトでは2013年4月、宗教対立で死亡したコプト教信者の葬儀で、参列者とカイロ住民が衝突し、2人が死亡。2015年2月には、リビアでコプト教徒21人がISに殺害された

2016年2月にはエジプトで、ビデオでイスラム教を侮辱した罪で10代のキリスト教徒3人が禁錮3年の判決を受けた。3人は自分たちはISを嘲笑していたのだと主張した。さらに同年12月には、カイロのコプト教会で爆弾が爆発し、25人が死亡。ISが犯行声明を出した。

シーシ大統領による非常事態宣言は、人権上の問題が懸念されると指摘する声もある。元軍総司令官の大統領は、国内の公民権を厳しく制限してきたと、国内外の人権団体から批判されてきた。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、政府批判の取り締まりを通じて、これまでに数万人が逮捕され、治安維持部隊は拷問や拉致、そしておそらく超法規的処刑など、はなはだしい人権侵害を重ねていると指摘している。


コプト教会とは

コプト正教会はエジプトにおける主流のキリスト教。ほとんどの信者はエジプト国内にいるが、国外にも信者が約100万人いる。

コプト教の教えでは、おそらく西暦50年に聖マルコがエジプトを訪れた時が宗派の発端とされる。聖マルコは初代アレクサンドリア教皇と位置付けられ、コプト正教会は最も初期に聖地の外に成立した教会とされる。

コプト教会は西暦451年のカルケドン公会議で、イエス・キリストの神性をめぐる議論で他のキリスト教宗派と分裂。ローマ帝国で迫害の対象となり、エジプトがイスラム国家となった後はさらに迫害が続いた。

(英語記事 Egypt declares state of emergency after deadly church attacks

提供元:http://www.bbc.com/japanese/39550483

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