WEDGE REPORT

2017年4月12日

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木村史子 (きむらふみこ)

1988年渡英、97年~2009年日本テレビロンドン支局に勤務、欧州、中東、アフリカのニュース取材に関わる。海外取材歴26年。

モリア難民センターで支給される飲料水

 11月の火災以来、同センターからは子供や女性などのグループが島内の一般住宅やホテル、他のセンターに移された。それがモリア難民管理センターの収容人数が減った最大の理由である。このため収容者は男性単身者が多数を占めている。 アフガニスタン出身のモフタール(25)は「2日前にアテネへの移動が決まった。フランスやドイツ、英国で暮らす家族と一緒に住めるよう再会の申請をする。今妻と暮らしている別のセンターはモリアよりずっと快適だが、水が供給されない。今日は自分たちのセンターで無料配布される果物を持って40分歩いてここまできた。ここで無料配布される飲料水と交換してもらうためにね。トルコからここに渡るボートに妻と2人で2400ドル、貯金を使い果たした。また一から働いて、お金を貯められる日が来るのはそう遠くないと信じたい」と嬉しそうに話した。

 バングラデシュ出身のサイフとレジャール(いずれも17歳)は「一緒に来た仲間はみんなトルコに送り返された。バングラデシュ人、パキスタン人、ネパール人、スリランカ人、インド人に望みはない」と声を落とした。

レスボス島のモリア難民管理センター

 自由と人権の擁護者を自認するEU。その東の端、中東との接点となるレスボス島ではとても人道的とは言えない難民への対応が続いている。難民の声を取材するためモリア難民管理センターを取り囲むフェンス沿いを歩いていると、2~3人が小走りでこちらに駆けてきた。背中に「ポリス」と入った制服警官に「何をしている」と職務質問された。「写真を撮ったのか」と聞かれたが、咄嗟に首を振った。「パスポートを見せろ」と言われ、代わりに携行していたEUの運転免許を見せたが、警官は英国のUKを指差し「EUから出てゆく国だ」とせせら笑った。

 同センター内に同行を求められ、フェンスの破れた部分をくぐって敷地内に入った。さっきフェンス越しに取材した若者たちが心配そうに見ている。「大丈夫」と知らせるために手を振った。センターの中では20人ぐらい並んでいる場所があったが、どの顔にも表情がない。隙を見てカメラからメモリーカードを抜き取った。写真を消去されたカメラマンがいると聞いていたからだ。

 同センター内詰所でもらちがあかない。屈強で大柄な私服警官2人に車に乗せられ、ホテルにパスポートを取りに行った。そのあと石造りの警察署に連れて行かれた。鉄製の重いドアがガチャーンと閉じられると、そこは小窓からしか光が差さない薄暗いホールだった。ギリシャ正教の祭壇があり、ロウソクが灯されていた。パスポートなどのコピーを取られた。今後はパスポート携行と写真撮影は同センター入り口で許可を取るよう注意され、やっと解放された。

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