WEDGE REPORT

2017年4月12日

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木村史子 (きむらふみこ)

1988年渡英、97年~2009年日本テレビロンドン支局に勤務、欧州、中東、アフリカのニュース取材に関わる。海外取材歴26年。

 命からがら島にたどり着いた難民たちにとってEU域内に入れるか、トルコに送り返されるか、まさに運命の分かれ道。最大の関門が難民認定のための面接だ。その前に難民たちに法的なアドバイスをしているのがブルーグマンらの「レスボスの欧州弁護団」である。

 難民認定の面接は、子供、お年寄り、母子、病身、身体障害者、同性愛者など社会的弱者から優先的に進められる。シリアなど紛争地から逃れて来た人たちはパスポートを持たない場合が多く、身元確認に時間がかかるためなかなか面接の日取りが決まらない。

 最近では家族再会プログラムが進められ、EU域内にいる家族に連絡して身元確認を行い、引き取ってもらうケースも多い。それでも通常10カ月ほどかかるという。最近の一番早かった例はスウェーデンに夫がいた女性のケースで、4カ月で再会を果たしている。

難民の支援活動を続けるレスボスの欧州弁護団

 現在いるボランティアの弁護士はオランダ、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギーの計7人。フランス人女性弁護士は「最初に政治亡命って何か知っている?と必ず質問する。ほとんどの人が人権の意味も知らない」と語る。オランダ人女性弁護士は「ムスリム(イスラム教徒)の同性愛者は恥に感じて言おうとしない。同性愛者は難民認定されやすいと解っていても口に出せない深い葛藤がある」とため息をついた。

 その一方でこんな話もある。オランダ人男性弁護士は「シエラレオネが戦場で大変だったと言うのは随分、昔の話。同僚と顔を見合わせたのはこの2週間でそれぞれ10人ずつぐらいから全く同じ話を聞いたことだ。この手の話が認定されやすいからか」と肩をすくめた。やはり「経済移民」としか言えない人たちが多く含まれているのも現実だ。

 ギリシャの代表は「ギリシャは国も国民も、債務危機以降の厳しい財政再建で疲弊している。元手も財源も何もないのだから、やれることは限られている。レスボス島は2年前、難民が島中にあふれかえって観光客が空っぽになる最悪の危機を経験した。あの時に比べると今はどうということはない」と話した。

 ギリシャの副代表を務める女性弁護士は船舶関係が専門だ。ギリシャ債務危機以降、20%から29%に上がった法人税率に悲鳴を上げた海運業者が本社を国外に移すようになり、仕事が減ったという。「昨年から税金や社会保障費で給料の8割方持っていかれる。どんな状況でも飄々とやり過ごすのがギリシャ人の心意気だが、子供たちに将来もギリシャで頑張りなさいとは言えない」と悲しげに語った。

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