2024年4月19日(金)

田部康喜のTV読本

2017年4月12日

重層的に描かれる昭和という時代

 脚本の岡田惠和は、みね子が生きていく昭和という時代を美しい理想郷としてではなく、重層的に描こうとしているように見える。64年五輪後は不況があり、それを抜け出すと原油の価格の高騰という石油危機があった。

 地元に残って農業を手伝おうと思っていた、みね子は父・実の失踪という事態のなかで、幼馴染の時子(佐久間)や三男(泉澤)とともに、集団就職で東京にでる。職場は、トランジスタを製造する向島電機である。

 そこに待ち受ける寮仲間たち。兼平豊子(藤野涼子)と青天目澄子(松本穂香)、夏井優子(八木優希)、秋葉幸子(小島藤子)らである。

 ドラマは東京に舞台を移すことによって、若手女優たちの群像劇となっていくのだろう。そのなかでは、藤野涼子が注目株である。

 宮部みゆき原作の映画『ソロモンの偽証』(2014年)で、同名の主人公役でデビューした。中学校の屋上から転落死した男子の死因をめぐって、自殺なのかあるいは不良の男子生徒による他殺なのか、それを解明するために、生徒たちが裁判を開く。それに続く女生徒の交通事故死の原因も明らかになっていく。藤野はその検察官役を務めた。

 藤野が、不良の生徒による他殺を示唆する偽の告発状を書いた、女生徒・三宅樹理(石井杏奈)を追及するシーン。三宅は交通事故死した友人に罪をなすりつける。呆然と立ち尽くす藤野の右目から涙が一筋落ちる。そして、裁判の最後に、三宅が不良の生徒にいじめられているのを止めずに去った、自分の罪を告白して倒れ伏す。

2015年にはブルーリボン賞を受賞

 有村架純もまた、『あまちゃん』以降の映画の世界で群像劇を演じながら、女優として成長してきたといえるだろう。

 ブルーリボン主演女優賞を受賞した、映画『ストロボ・エッジ』(2015年)の木下仁菜子役では、一ノ瀬蓮(福士蒼汰)と安藤拓海(山田裕貴)の間で揺れる高校生を細やかに演じた。『ビリギャル』(同年)では、不良の高校2年生が小学校4年生程度の学力から、慶応大学に現役で合格するまでの塾講師や、友人たちの絡み合いをコミカルに演じてみせた。

 『ストロボ・エッジ』のラストシーン。福士の後を走って追いかけたプラットホームで、有村がなきじゃくりながら愛を告白する。花火大会の夜に、いったんは思いを断ち切って歩く有村の背後に何発もの大輪のような花火が広がる。

 「あまちゃん」がそうであったように、今回もいくつもの記憶に残るシーンが生れそうである。

  
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