安保激変

2017年4月13日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 4月6日から7日にかけて、フロリダ州のパームビーチにあるリゾート地「マール・ア・ラゴ」で、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席による初の米中首脳会談が行われた。会談では、幅広い分野を扱う「米中包括対話」の設置や、米国の対中貿易赤字削減に向けた「100日計画」の策定、トランプ大統領の年内の訪中などで合意がなされたが、最大の焦点は会談直前にも弾道ミサイル実験を強行した北朝鮮への対応だった。

 トランプ政権は発足後に北朝鮮政策の見直しに着手し、オバマ政権の「戦略的忍耐」は失敗したと結論づけた。そして、軍事的手段を含む「すべての選択肢」が検討されていることを繰り返し表明する一方、中国に北朝鮮に対する影響力を行使するよう求めてきた。米中会談の直前には、トランプ大統領が、中国が北朝鮮の核ミサイル開発を中止させるために協力しなければ、米国が単独で行動すると述べ、それが軍事攻撃を意味するのかどうかに注目が集まっていた。

(写真:AP/アフロ)

共同声明も共同記者会見もなし、
米中双方の発表内容にズレも

 初日の夕食会で、トランプ大統領は笑顔で習主席と握手を交わし、偉大な関係を築こうと呼びかけた。しかし、実際には夕食会の直前に米軍によるシリア空爆が決定されており、夕食会の終わりにトランプ大統領から攻撃の事実が習主席に伝えられるという波乱含みの幕開けとなった。シリアへの空爆は、数日前のアサド政権による化学兵器の使用への対抗策として行われたが、トランプ政権は空爆を夕食会の最中に行うことで、中国、そして北朝鮮にも軍事的手段を使うべきときは使うというシグナルを送ろうとしたのだ。

 今回の会談では共同声明も共同記者会見もなく、米中双方がそれぞれ会談の内容を発表するという異例の形が取られた。実際の会談では相当激しいやり取りもあったためだ。

 北朝鮮問題について、ティラソン国務長官の発表では両首脳が北朝鮮の核・ミサイル問題について「深刻な段階」に達しているとの認識で一致し、国連制裁の完全履行も確認したとなっている。他方、王外相の発表では、米中両国が朝鮮半島の非核化と国連制裁の完全履行を確認したことに加え、中国側が対話と協議による問題の解決と、韓国へのTHAADミサイル防衛システムの導入反対を主張したとなっており、米中双方の発表内容にズレがある。

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