2024年4月18日(木)

安保激変

2017年4月13日

 それでも、中国がトランプ政権の圧力に屈するとは考えにくい。制裁で北朝鮮が崩壊することは中国の国益にはならないため、金正恩体制を生かさず殺さずの状態にしておきたいのが中国の本音だろう。シリア空爆をめぐって米ロ関係が悪化する中、中国はロシアとの連携によって、米国からの圧力をかわすことができる。米国が国連安保理でさらに厳しい制裁を提案しても、ロシアが反対するので、中国はロシアの陰に隠れていればいい。また、シリア空爆をきっかけに中東情勢がさらに悪化する可能性が高く、今の米国に中東とアジアでの二正面作戦を行う余裕があるかどうか、中国は見極めようとするだろう。

 会談の成果に関して、米中双方は表向き友好関係を強調したが、実際には北朝鮮をめぐる両国の立場の違いが一層浮き彫りになった。トランプ政権は引き続き中国への圧力をかける一方、おそらくは為替操作国指定を見送ることで、中国に妥協の姿勢も示すようだ。他方、秋に党大会を控えた中国は米中関係の強化と朝鮮半島の安定の両方を重視し、結果としてトランプ政権が納得する行動は取れないだろう。このため、事態の打開を求めてトランプ政権が軍事的手段に出る可能性を排除することは危険である。

 数年後に振り返れば、この米中首脳会談が、朝鮮半島そして地域の安全保障環境を劇的に変化させるきっかけになったと評価されるかもしれない。日本としても、米国と緊密に連携してあらゆる事態に対処する準備を進めつつ、金正恩後の朝鮮半島にどう関与していくかを真剣に考える必要がある。

  
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