世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年4月20日

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 メイ首相は、「今はその時ではない」、Brexitについて判断を下すには早過ぎるタイミングでスコットランドの人々に投票を求めることは公正でないと述べ、スタージョンが要求するタイミングでの住民投票を拒否しています。また、独立追求の動きはBrexit交渉を害するとSNPを非難もしています。但し、メイ首相の発言は未来永劫に住民投票を排除する趣旨ではありません。

 独立はBrexit の過ちを犯すことと同様だという、この社説の警告について言えば、そういう議論も成り立つかもしれません。しかし、合点が行かないのはSNPの住民投票の要求は正当であり、メイ首相も議会もこれを拒むことは間違いだという指摘です。その論拠は、SNPは状況に重大な変化があれば新たな住民投票を行うと公約して昨年の選挙に勝ったが、Brexit は重大な変化だという点ですが、これは専らSNPないしスコットランドの視点に立った議論です。

 スコットランドに対してイングランドの側に後ろめたい気持ちでもなければ、こういうSNPの議論を容認することにはならないのではないでしょうか。エコノミスト誌に限ったことではありませんが、スコットランドは残留に大多数が投票したにもかかわらずEUを去るのか、それとも最大の貿易相手である残りの英国との関係を転覆させるのかという残酷な選択を迫られている、という同情がどこかにあるようにも思われます。この感情はメイが単一市場のメンバーシップと決別するいわゆるハードなBrexit(EUから離脱する以上当然のことと思いますが)を選択し、また単一市場へのアクセスを保証する貿易協定は不満足なものにならない方がましだとの強い姿勢を示したことで強まっているのかも知れません。住民投票を拒否することによって、スコットランドの感情を逆撫でし、独立指向にますます追い遣るという恐怖もあるかも知れません。

 Brexitの姿が明確になる前にメイが住民投票に応ずる可能性はないと思われますが、問題に決着を着けるためにいずれは応ぜざるを得ない見通しにあるのかも知れません。しかし、住民投票は危険な賭けです。

  
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