使えない上司・使えない部下

2017年4月20日

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決して、「復活」というものではありません

 会社の経営が悪化したのは、リーマンショック(2008年秋)の影響を受けたこともあるのですが、人件費の問題もあります。200人ほどの社員の給料を2年間で倍にしたのです。社員の平均年収が400万円ぐらいでしたから、800万円ほどにしました。

 200人ほどの会社になれば、創業社長が年収5000万円を受け取ることは可能です。社員たちは、思っていたのでしょうね。「安田さんは社長だから、仕事ができる。だから、収入も多い」と。ところが、私にはそんな力がない。

 後ろめたい思いがあったのです。搾取をしているんじゃないか、と。わずか2年で社員の給料を倍にした。今にして思うと、これがゆきづまった大きな理由でした。社員たちは始めの頃は喜んでいましたが、たぶん、私のことを「何を考えているのか、わからない」と見ていたんじゃないか、と思います。

 社内にも、お金をかけました。多くの中小企業の社長を見てきましたが、社長の机はずいぶんと立派なのに、社員の机がボロボロになっている会社があります。なぜ、ここまでして自分を美化するのだろうと思っていたのです。

 そんな私も会社の経営が上手くいくと、ゴージャスな社長室に憧れるようになったのです。自分だけがそのような社長室にいればよかったのかもしれません。だけど、それができなかった。それで、会社全体を社長室にしようとしたのです。社員は当初はともかく、時間が経つと、あまり喜んでいないようでした。

 ワイキューブを経営しているとき、社員から辞表を受け取るのが、最も落ち込む瞬間でした。私はナイーブな面があり、冷静さを装いながら、傷ついていました。社長には、向いていないのでしょうね。

 会社の経営はともかく、人生には自信がありました。かねてから、人生は映画みたいないものと思っています。主人公がずっと成功していくのが、いい映画ではないと思う。山あり谷ありのほうが、映画がおもしろくなる。その意味では、私の人生はなかなか、絵になるのかなと感じています。

 残りの人生をどう撮るか……。決して、「復活」というものではありません。人間とは、実にばかばかしい生き物と思います。様々な欲をもって、競争をして勝った、負けたと一喜一憂する。あの頃のように、社員を大量に抱え込むと、バカバカしいゲームに入らないといけない。私はもう、もっと冷静に、引いたところにいたいのです。

  
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