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2017年4月18日

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英国のハリー王子は、母親のダイアナ元妃の死について20年近く「考えないようにしていた」ものの、ようやく数年前にカウセリングを受けていたことを明らかにした。

12歳で母親を交通事故のため失ったハリー王子(32)は16日付英紙デイリー・テレグラフのインタビューで、2年間の「完全な混乱状態」と「完全な神経衰弱」寸前の時期を経て、20代後半になって初めて自分の悲しみと向き合うことができたと話した。

今では「そういうプロセスを経由したおかげ」で、「良い状態」にあると言う。

王子はさらに、暴力衝動をボクシングによって発散することができたと説明。ボクシングによって「救われた」と話した。

テレグラフ紙によるとハリー王子は、心の健康の問題を忌まわしいもののように扱う風潮をなくしたいという思いから、自分の体験について話すことにしたのだという。

今年のロンドン・マラソンは心の健康運動をテーマに、精神医療の推進と啓蒙に取り組む慈善団体「ヘッズ・トゥゲザー」を支援する。ハリー王子は、兄のケンブリッジ公ウィリアム王子とキャサリン妃と一緒に、同団体を応援している。

テレグラフ紙のブライオニー・ゴードン記者に対してハリー王子は、「母を12歳で失ったことで、過去20年間、自分の感情をいっさい閉ざしてきた。そのせいで間違いなく、私生活だけでなく、仕事にもかなり深刻な影響があった」と話した。

「たぶん何度も、完全な神経衰弱状態の寸前まで行っています。ありとあらゆる悲しみとか嘘とか、誤解とか色々なものが一気に、全方位から押し寄せてくることがあったので」と王子は打ち明けた。

ダイアナ元妃は1997年8月、パリで交通事故のため亡くなった。

「現実から目を背ける。それが自分の反応でした。母親のことを一切考えないと決めて。だって、考えたからってどうなるんだと思って」とハリー王子。

「悲しくなるだけだ、考えても母は戻ってこないんだからと思った。なので自分の感情においては、『よし、どんなことにも絶対、感情を入り込ませない』という感じだった」

王子はかつての自分について、「典型的な20歳、25歳、28歳だった」と振り返る。「『人生は素晴らしい』、『人生は上手くいってる』と思い込んで、その辺を走り回っていた。実際その通りだったし」。

「でも少しずつ話し始めたら、いきなり、それまで向き合ってこなかった悲しみの気持ちが一気に前面に出てきて、僕はそこで初めて、これはきちんと処理しなきゃならないという、そういうのが色々たくさんあると気づいたんです」

具体的に行動を起こそうと決めたのは、兄のケンブリッジ公に背中を押されたからだと王子は話した。

兄のウィリアム王子は「いいか、本当に何とかしないとだめだ。何の影響も受けてないなんて考えるのは、それは普通じゃない」と弟を諭したのだという。

インタビューはロンドンのケンジントン宮殿で行われた。心の健康を取り上げるポッドキャスト用の30分インタビューで、王子はゴードン記者とお茶を飲みながら、内心を記者に打ち明けた。

ゴードン記者もかつて、自分自身の過食症やアルコール依存症、強迫性障害との戦いについて明らかにしてきた経験がある。今回のインタビューに同席者はなく、2人きりで話し合うことができたという。

ゴードン記者は、どんな話題だろうと王室関係者の話を30分も聞くのは珍しいことで、ハリー王子は「とてもはきはきと話す、真っ当な人」だと話した。

ハリー王子は「気持ちを打ち明けるのに一番いいのは、一番話しやすい相手は、シュリンク(訳注・精神科医を意味する俗語)とかだ。アメリカ人はシュリンクと呼ぶよね。会ったことのない人の方がいい」と言う。

「ソファに座って、『いいかな、アドバイスはいらないから、ただ聞いてくれる?』と言う。それからはもう、ひたすら言いたいことをしゃべりまくるんだ」

「攻撃性を発散」

カウンセリングを受けたかと聞かれると、王子は「何度か。もっとたくさん。すごくいいです」と答えた。

その一方で、自分が抱えていた内心の問題は、アフガニスタンでの軍隊経験とは「間違いなく」無関係だと念を押した。

ボクシングをするようになったことについては、「ボクシングはいいとみんなが言っていたので。自分の攻撃性を発散するには、とてもいい方法だし」と王子。

「おかげで本当に自分は救われた。誰かを殴ってしまう寸前だったので」

「この2年半で経験してきたことのおかげで、今では自分の仕事を真剣に受け止められるようになった。私生活も真剣に受け止められるようになった。本当に世の中に貢献できる大事なこと、大勢のためになると僕が思うようなことのために、本気で努力して全身全霊で取り組めるようになった」


ピーター・ハント、BBC王室担当編集委員

王室の重要な立場にいる人が、このように語る様子は珍しい。

英王室はかつて、いたずらに感情をあらわにしないことを良しとする英国的価値観を体現する存在だった。そしてハリー王子は、その王室の未来を担うひとりだ。

感情を表に出さないという王室の価値観に、かつて打撃を与えたのは、ダイアナ元妃その人だった。

元妃は1995年、BBC番組「パノラマ」でマーティン・バシール記者に、自分の産後うつや自傷行為、過食症について話した。

そして今、息子のハリー王子が母親と同じように語っている。

ポッドキャストは聞きごたえのある内容で、王子は緊張していると認めた上で、自分の不安感や、かつて神経衰弱になりかけたこと、20代の自分が「問題児」だったことなどを忌憚(きたん)なく話した。

ハリー王子ほど高名な人が自分自身の精神的な苦しみについてこれほど語るのは、英国では初めてだ。

宮廷でどれほど特権的な暮らしをしていても、病気から逃れることはできなかった。

ダイアナ元妃の息子は、自分がこうして正直に打ち明けることで、精神医療をとりまく社会のタブーを打破する一助になればと期待している。


(英語記事 Prince Harry 'in total chaos' over mother Diana's death

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39626029

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