中東を読み解く

2017年4月19日

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 大統領権限強化の改憲を問うトルコの国民投票は賛成が僅差で上回り、エルドアン大統領が辛うじて勝った。実権型大統領の道ができたことで同氏は名実ともに権力を掌握し、今後十数年にわたって独裁的な強権政治が続く見通しになった。エルドアン氏はかつてのオスマン帝国の皇帝にも似た”現代のスルタン”を思い描いているようだ。

オスマントルコへの郷愁

(Elif Sogut/Getty Images)

 エルドアン氏にとって、大統領の権限を強化することは悲願だった。同氏は現憲法下では、大統領が象徴的な役割しか与えられていないにもかかわらず、首相を超えて実質的に権力を振るってきた。しかし規定を無視するこうした同氏に対し、国内外の批判は強く、憲法を改正して、名実ともに実権を持つ最高権力者の立場をどうしても手に入れたかった。

 同氏は今回の国民投票にあたり「大統領の権限が強まれば、危機に素早く対処でき、国が安定する」と主張し、しゃにむに勝利を目指した。クルド系の野党指導者や反対のジャーナリストらを次々に逮捕、改憲反対派の集会は開かせず、反対運動をする活動家への暴力や発砲事件も多発した。日々のニュースでも賛成派と比べ、反対派の動きは大きく伝えられず、偏向報道が日常化した。

 反対派は今回の国民投票では、公式な投票用紙によるものでない不正投票が多数あったとして、約250万票の再集計を要求。欧州評議会の選挙監視団も国民投票が公平に行われず、国際基準を満たしていないとする報告書を公表した。しかしエルドアン氏は「投票をめぐる議論は終わった」と一蹴している。

 今回の権限強化は基本的には「議員内閣制から大統領制への移行」を目指すもの。首相職を廃止し、大統領が副大統領・閣僚らの任免権、大統領令の発令、国会解散、非常事態の発令、政府予算案提出などの権限を保有するというのが主な内容だ。とりわけ憲法裁判所などの判事の任命権を大統領に付与したことで、司法への影響力が格段に強まり、3権分立が危うくなった。

 権限強化が適用されるのは2019年11月の大統領選挙から。新しい規定では任期は2期10年、例外的に3期目も排除していない。エルドアン氏の現在の威勢を考えれば、15年以上は大統領職に留まることが可能だ。同氏は11年間、首相を務めた後、2014年に大統領に転じた。首相、大統領の任期はすでに14年におよび、今後も含めると、約30年にわたって権力を握る見通しとなり、民主国家ではあり得ない長期政権となる。

 これほど権力に固執するエルドアン氏は何を目指しているのか。ベイルート筋は「エルドアンはかつて欧州の一部をも支配したオスマントルコ帝国の皇帝スルタンを思い描いている」と指摘する。最近の反欧州の愛国主義の底流にはオスマントルコの栄光への郷愁にも似た感情が根強くあるのだという。

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