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2010年6月24日

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 鳩山首相と小沢民主党幹事長の突然のダブル辞任で6月4日、菅直人氏が新首相に指名された。自民党流の「雑誌の表紙を代える」手法を、民主党は政権発足1年もせぬうちに会得したようだ。だが、政権与党の躓きは、何も日本独自の現象ではない。

 5月31日、ドイツのケーラー大統領が突然、辞任した。アフガニスタン訪問でドイツ軍の派遣について「経済的に権益を守るため」と発言した責任をとった、と説明された。ケーラー氏は元国際通貨基金(IMF)専務理事。元首として重要な役割を果たす大統領として、再任されたばかりだった。

 だが米CNNが伝えるように、「有事の際はわれわれの利益を守るために軍事介入も必要になる。例えば自由な貿易路のため、貿易、雇用、収益におけるわれわれの機会に悪影響を及ぼしている可能性がある地域的不安定要因を防ぐことなどだ」と発言したのなら、ケーラー氏の発言は至極真っ当な言いぶりである。

 むしろ朝鮮半島で緊張が高まるなか、首相降ろしの政争を繰り広げ、万一の際 の在留邦人救済などを真剣に議論している気配さえない日本の方がどうかしている。そうした軍の役割を巡る政治家の自覚もさることながら、ドイツの政局という観点からみて気がかりなのはメルケル首相が発表の直前になって辞任の意向を聞かされたという点だ。

 イタリア訪問の予定を急きょキャンセルして翻意を促したが、叶わなかった。党内に対する影響力を全く持たなかったどこかの国の前首相とは違うとはいえ、メルケル首相の指導力に陰りが生じているのは間違いない。大きなきっかけは、ギリシャに端を発した欧州金融危機への対応の不味さ。その結果、5月9日に行われたドイツ最大の人口を持つ西部ノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙で連立与党が敗れ、地方議会の議席に比例する上院で過半数を失ったのが響いている。

 敗因はギリシャ救済のための金融支援に対し、負担を嫌うドイツの有権者が猛反発したことだ。怠け者のギリシャ人を自分たちの血税を使ってまで何故救済しなければならないのか、というのがドイツの有権者の本音である。

 ギリシャ問題を選挙の争点にしたくなかったメルケル政権はギリシャに辛く当たり、問題処理を先送りしたが、このことが事態をさらに悪化させた。金融市場の疑心暗鬼が募り、ギリシャばかりでなくポルトガルやスペインなどにも危機が波及したからだ。その結果、財政・金融危機がますます注目され、墓穴を掘ったから皮肉である。

足並み揃わぬ金融規制

 追い詰められたメルケル政権は5月19日、突然にユーロ圏の国債やドイツの大手金融機関10社の株式の空売り禁止を打ち出した。「金融市場の投機筋は悪者だから、征伐すべし」といった国内世論に抗しきれなくなったのだ。欧州の当局者がしばしば見せる反市場の政策と言ってしまえばそれまでだが、この発表は事前にフランスへの打診がなかった。

 通常、この種の政策は独仏が擦り合わせて「欧州基準」を作っていく。ところが、今回は完全にドイツの独走だった。フランスのサルコジ大統領が立腹したのは言うまでもない。欧州当局の足並みが揃っていないのが見透かされた結果、ユーロはますます売り込まれ、6月に入って1ユーロ=1.2ドルを割り込み4年ぶりのドル高・ユーロ安水準となった。ユーロは対円でも1ユーロ=110円に迫り、日本の輸出業者は音を上げだした。

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