WEDGE REPORT

2017年5月13日

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モデルを全国へ

 かつてここが「ジャングル」だったころの名残のお茶の木も、有効活用している。

 「種と花を取るんです。化粧品の原料にします」

 通常のお茶栽培のように肥料を多く与えていれば、それほど多くの花が咲いたり実がなったりすることはない。加えて花と実に木のエネルギーが奪われることを嫌って早めに摘み取ってしまうため、花が咲いているのを見かけることはない。対して、肥料に頼らない自然栽培の茶畑では花も実もたくさん採れるのだという。8月末から11月初めにかけて収穫する花は合計で300キロほど。サポニンという老化を防ぐ成分が含まれるため、化粧品会社のクレコス(奈良市)が使っている。種に含まれるオレイン酸は、オリーブオイルにも含まれる肌に潤いを与える成分。種からとった油は化粧品のベースオイルになるため、こちらの需要も大きい。

耕作放棄地以外の茶園も借りて栽培

 「種も花もものすごく需要があるのに、国内で量が取れない。このお茶の作り方をしたら、お茶の種や花が取れてプラスの収入になりますよというのを、伝えていきたい。茶畑は全国に1万ヘクタールあるので、全国の耕作放棄された茶畑のあるところにこうしたモデルを持って行ける」

 伊川さんは耕作放棄地を使った栽培普及の夢を熱く語る。

 ところで、お茶の産地といえば、ぱっと思いつくのは宇治、静岡など。なぜそうした産地でなく、奈良というあまり全国的に有名でない産地から、耕作放棄地を使った栽培という新しい手法が生まれてきたのか。

 「奈良は耕作放棄地先進県なんです」と伊川さん。

 というのも、奈良で収穫されたお茶は一般的に京都に運ばれ、宇治茶として販売されることになる。独自のブランドで売れない分買いたたかれる結果になり、かつ、お茶の消費の低迷の影響を真っ先に受けることになったのだ。

 「下請け工場のように、先に仕事がなくなってしまう。なんとかせなということで、こういう話題が出てくる。大産地では、耕作放棄地はそれほど大きな問題になっていなかったから、今焦っていて、話をしてほしいと僕が呼ばれたりしています」

 実際、この栽培方法の水平展開はすでに始まっている。昨年12月には、岐阜県揖斐川町で地元農家と共同出資して農事組合法人を立ち上げた。大和高原で始めたモデルを地域に合うようにカスタマイズしつつ、活性化に役立てていく。

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