WEDGE REPORT

2017年5月13日

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耕作放棄地の開墾で農業をスタート

 ところで、伊川さんが条件の悪い耕作放棄地で茶の栽培を始めたのには理由がある。実家が郡山市で飲食店を営んでおり、農家ではなかったのだ。進学校に通う生徒だった15歳の時に自然農法を知り、「自分の人生でやるのはこれだ」と決心。農業の私塾に通い、畑を借りて農作業をするようになった。

土地の有効利用にお茶の樹間を使って薬草の栽培もしている

 しかし高校卒業後、新規就農したいと話す若干18歳の若者に、条件の良い農地を貸してくれる人はいなかった。なんとか借りられたのは耕作放棄された茶畑37アールで、伸びきったお茶の木が互いに絡み合い、その上をツタが覆っている状況だった。

 「ジャングルみたいなあんな状態の畑をどうしたらいいかって、どの農業の本にも書いていないんですよ。だから、とりあえずお茶の木を刈り込もうと。草刈り機を持って、(シルベスタ・スタローン演じる)ランボーの気持ちで、ウォーって開墾していくんです」

 と当時の苦労を振り返る。お茶の木自体は元気だったため、短く刈り込んでもそこからお茶の芽が出てきた。

 「土地を自分で探したのは最初だけ。そこからは、これやってくれへんかと話が舞い込むようになって、徐々に広がっていきました」

 熱心な働きぶりで地元の信頼を得たことで、耕作放棄地だけでなく通常の茶畑も任されるようになったのだ。そうして任された茶畑のひとつ、1ヘクタールほどの広さにお茶の木が等間隔に列をつくっている畑では、草引きの作業をすべて奈良市の福祉施設の障害者に任せている。

 「障害者、健常者にかかわらず1アール当たりの労賃を決めてやってもらっています。地道にお茶の間の草を引いてくれて、本当になめたようにきれいにしてくれます」

 健一自然農園全体で、奈良県内の計3カ所の福祉施設と農福連携を行っている。

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