シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年5月18日

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湯之上隆 (ゆのがみ・たかし)

微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を修了後、日立製作所に入社。以後16年にわたり、中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センタ、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士授与。現在、半導体産業と電機産業のコンサルタントおよびジャーナリスト。微細加工研究所所長。著書に『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)など。

 そして、なぜ日本半導体メーカーがサムスン電子に完敗したかといえば、
①情報収集力に大きな問題があった(専任マーケッターなど一人もいなかった)
②だから市況を読む分析も甘かった(サムスン電子がどう出てくるかの分析もまるでできていなかった)
③その上、総合電機メーカーの体質により迅速で果断な決断ができなかった(李健煕のような肝の座った経営者は誰一人いなかった)
つまり、メモリビジネスに必要な要素すべてにおいてサムスン電子に劣っていたために完敗したと考えている。

 特に、③の迅速で果断な決断ができる経営者の不在は、目を覆う有様だった。なぜなら、サラリーマン社長は、失敗を一切せず(日本企業が保守的で減点主義なため)、つつがなく任期を全うすることを最優先するため、挑戦的で勇気ある決断をしようとしなかったからだ。

革新機構と政策銀は引っ込んでいろ

 3月17日付の読売新聞によれば、「官民ファンドの産業革新機構と政府系の日本政策投資銀行が共同出資し、東芝メモリ株の3分の1超を取得する構想が浮上していることが16日、分かった。米系投資ファンドなどを巻き込み、数社で過半を取得する可能性もある」とある。そして、革新機構と政投銀が出資するのは、「海外への技術流出を防ぐ」ためであり、「両者が3分の1超を出資すると、合併など重要な経営事項を決める際に拒否権を発動できる」からであると報じている。

 これが、筆者が最も恐れていたことである。前述した通り、メモリビジネスで最も重要なことは、巨額な設備投資を、いつ、どこで行うか、という迅速で果断な決断をすることにかかっている。

 ところが、「拒否権を発動するため」だけに、ボードメンバーに革新機構や政策銀から送り込まれた厚顔無恥な輩は、目の前に到来しているチャンスを「拒否権を発動して」すべてを台無しにしてしまう可能性がある。だから、革新機構や政策銀には引っ込んでいてほしいのである。革新機構に至っては、明確な法律違反である。そんなことに、無駄に税金を使うなと言いたい。
  
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