2024年4月19日(金)

World Energy Watch

2017年5月12日

 電源の多様化、安全保障のため原発を導入する国は、ベラルーシ、ブラジルなどだ。ベラルーシはロシアからの天然ガスを利用する火力にほぼ100%依存している。ブラジルでは水力の比率が60%を超え、干ばつにより水力発電量が不安定になる問題を抱えている。フィンランド、英国などは温暖化、気候変動問題に対処するため二酸化炭素を排出しない原発を建設する。いま、期限を決め、脱原発を方針として打ち出している国は世界の中でドイツしかない。原発を止めるのは世界の流れでないことは明らかだが、原自連の情報源はどこだろうか。

再生可能エネルギー導入に苦しむ欧州諸国

 世界の多くの国では、発電設備を中心に再エネの利用促進が行われている。いま、世界の発電量における再エネの比率は、図-1の通り水力を除くと全て合わせても6%程度だ。世界の発電量の40%は石炭火力からだ。再エネ支援に力を入れている多くの国は、気候変動問題への対処が頭にある。しかし、再エネ導入は、そんなに簡単な話ではなかった。


 コストが高い太陽光発電設備などの再エネを導入するためにドイツを先頭に欧州の主要国を中心に導入された制度が、再エネ発電設備からの電気を買い取る固定価格買い取り制度(FIT) だった。2000年にドイツ政府が買い取り価格を改定し高く設定したことから、再エネ発電設備は急速に広まることになり、ドイツでは、発電設備の50%以上を再エネが占めることになった。制度で導入を支援すれば、大量導入により再生可能エネルギー発電設備のコストが下がり火力発電の発電コストと競争することが可能になるとの考えに基づき、多くの国がFITの導入を行った。

 日照に恵まれたイタリアでは太陽光が、また風量にも恵まれたスペインでは太陽光と風力の導入が進んだ。しかし、導入量の増加につれFIT負担金による電気料金の上昇が問題になってきた。欧州主要国の家庭用電気料金の推移、図-2のグラフが示す通りだ。電気料金上昇による輸出産業への影響を回避するため、ドイツ政府は輸出産業にはFIT賦課金免除策を導入したが、他の需要家の負担額は上昇する一方だ。

 結局、欧州主要国は寛容な買い取り価格を相次いで撤回することになる。ドイツは2014年に小規模設備を除きFITを廃止、今年1月からは入札制度による買い付けに切り替えた。スペインは遡及してFITの金額を減額し、さらに発電事業者の収益率に基づき買い取り額を決める制度に変更した。イタリアは、太陽光発電事業者が得る収益に新たな課税制度を導入した。実質的には遡及し買い取り額を減額することと同じだ。

 英国は昨年1月から買い取り価格を大幅減額した。設備導入増が再エネの発電コストを火力並みにするはずだったが、その前に買い取り価格の負担による電気料金の上昇に各国政府は頭を抱えることになってしまった。図-3のドイツの太陽光発電設備導入量と図-4のスペインの風力設備導入量が示すように、欧州主要国では制度の見直しにより、支援制度を失った再エネ設備導入量は激減した。さらに、再エネ導入はもう一つ大きな問題をもたらすことになった。


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