ネット炎上のかけらを拾いに

2017年5月11日

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 また、パンパースのCM動画と比較する声も多かった。こちらは同じように歌声に合わせて母子が登場する動画でありながら、父親やそのほかの家族はもちろん、地域の人たちのサポートや愛情を受けながら子どもが育つことを示唆するもの。どちらが母親の不安を払拭する動画か。どちらが現代に合った動画か。どちらがターゲット層に受け入れられやすい動画か。これはもう一目瞭然だろう。

「真面目に考えてもこの結論」の失望

 ワンオペ育児は確かに大変だ。だからこそ、「父親も育児休業を」と叫ばれ、自治体も母親の産後鬱ケアのために育児中の家庭への訪問を行うなど対策を取っている。育休からの復帰後よりも、育休中の孤立感の方がツラかったと語る母親は決して少なくない。子育ては何かと美化され、母親には「自己を犠牲にしての献身」が求められる風潮が未だにあるが、こういった価値観が母親を追い詰めていくことは、これまでも繰り返し指摘されてきている。引用したツイートにもあるように、ワンオペ育児を「生傷」ではなく「宝物」のように語ることの欺瞞や危険性を、母親たちは充分に知っている。“母親たちだけが思い知らされている”と言ってもいいかもしれない。

 とはいえすでに書いた通り、この炎上で筆者が感じたのは怒りというよりも悲しみや諦めである。制作側がふざけて作ったのではなく、それなりに母親の大変さを踏まえた動画だということはわかる。だからこそ「宝物」のくだりで、「真面目に考えてもこの結論になるのか…」という失望がある。

 バズフィードの記事によれば、ユニ・チャームはこの動画の削除を考えていないという。確かに、このタイプの炎上は、記事を削除するよりも、批判を受けて次回の動画で汚名返上する方が良いように感じる。初回は「あえて」、ワンオペ育児だけを描写したと思わせるような動画を。

 ちなみに、ユニ・チャーム関連の動画はGW中にも1本炎上していた。

 これはタンポンに関する動画で、「男性の65%が生理中の彼女に困ったことがある」というアンケート結果を示しながら、「(生理中は)やたらとトイレに行くから待っている間がさみしい」「シーツを汚して落ち込んでいる」といった男性の声を紹介。だからこそ、「タンポンを使おう」というCMだった。

 このCMには、男性のコメントがあまりにも幼稚であることや、「恋人の生理現象を『困る』とはどういうことか」「彼氏を困らせるからではなく、自分が快適に過ごすために使うべきでは」といった意見が相次ぎ、動画は非公開となった。

 こちらの動画の場合は、そもそもの発想からアウトだという判断になったのだろう。企画ありきで、アンケートや男性のコメントを無理矢理当てはめた感があった(こんなイメージを流布されて一般男性も気の毒だと思うほど)。こちらに比べれば、ムーニー動画はまだ挽回しようがありそうだ。

  
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