佐藤忠男の映画人国記

2010年7月5日

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 映画の脚本家であり監督でもある松山善三は神戸市の生まれである。ただし育ったのは横浜。松竹大船撮影所で木下惠介監督(1912〜98年)の助手をつとめ、脚本家となって同じ木下門下の小林正樹監督(1916〜96年)の「あなた買います」(1956年)「黒い河」(1956年)「人間の條件」(1959〜61年)などの脚本で注目され、監督にも進出して作った「名もなく貧しく美しく」(1961年)が良い作品だった。聾唖の夫婦の物語で、主演は夫人の高峰秀子である。その後の作品ではやはりサリドマイドの障害を負って生きる女性の物語である「典子は、今」(1981年)が傑出している。

 宝塚市出身の龍村仁は自主製作のドキュメンタリー「ガイアシンフォニー・地球交響曲」シリーズで根強いファンを持っている。地球はそれ自体ひとつの生命力を持った有機体だと主張して地球環境問題などに新しい見方を提供するユニークな仕事である。

 黒澤清監督は神戸市出身。学生時代から自主製作で注目され、作品は国際映画祭などでよく上映されて外国にもファンが多い。代表作は「CURE」(1998年)だろう。謎の風来坊がいて、まともな人たちがその男と話をすると知らないうちに催眠術にかかったように殺人を犯してしまうという奇妙な物語だが、こんな怖い映画も滅多にない。

 女優の上野樹里は加古川市出身。「のだめカンタービレ」(2009〜10年)の、のだめ役をテレビシリーズから映画でも演じてこれが大ブレーク。純情で元気のいい、茶目っ気もあるヒロインでユニークな面白いキャラクターをつくり出した。

 北川景子は神戸市出身。藤沢周平原作の時代劇の「花のあと」(2010年)で、上品で凛とした武家の娘を演じてなかなか良かった。立回りもあるがつつましくしとやかな感じのまま剣をふるうところが、これまでの時代劇の女剣士ものにはない新鮮なところだった。

 笹野高史はいまは淡路市になっている一宮町の出身である。学生時代から劇団自由劇場に参加し、出演者たちが自分でジャズを演奏して評判になった「上海バンスキング」(1979年)の舞台などが注目された。「男はつらいよ」のいくつかの作品に出演して喜劇演技も認められ、「釣りバカ日誌」シリーズでは三国連太郎の社長の車の運転手で常連になる。そしてそれらの作品にかかわっていた山田洋次監督の「武士の一分」(2006年)で、重要な脇役である下男役に起用されたのが大当りだった。一見してヘラヘラしたお調子者のようにふるまっているがじつは封建的忠誠心の権化でもある男。なんだか隠していた宝物をひょいと見せつけられたような本格演技で本当にびっくりさせられたものだ。

堤真一主演の本格医療ドラマ『孤高のメス』は現在、全国ロードショー公開中。(c)2010「孤高のメス」製作委員会 
公式HP:http://www.kokouno-mes.com/

 堤真一は西宮市出身。千葉真一がアクションものの演技者を養成するためにやっていたジャパン・アクション・クラブに入り、真田広之の付き人になる。舞台やテレビで俳優として経験を重ね、地味な脇役として認められるようになったが、近年ぐっと風格が大きくなって「クライマーズ・ハイ」(2008年)や「孤高のメス」(2010年)のような大作で主役をやるようになった。着実に年輪を重ねて大きくなり、いまや押しも押されもしない存在だ。

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