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2017年5月19日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞前論説委員長

政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社常勤監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、1998年のクリントン大統領の弾劾裁判、2002年の第2次米朝核危機、6カ国協議などを取材した。

 交渉開始につながりうる動きはすでにでてきている。今月8、9両日、ノルウェーで北朝鮮外務省の対米関係、核問題担当責任者、崔善姫(チェ・ソンヒ)北米局長と米国のピカリング元国連大使が非公式に接触したと報じられた。水面下で頻繁に接触が図られているという情報もある。

 しかし、仮に交渉が6カ国協議再開という型式で始まるならば、再び頓挫すると強く危惧せざるを得ない。なぜか。議長が中国だからだ。朝鮮戦争を共に戦った中国と北朝鮮との関係をいまさら論じる必要はあるまい。北朝鮮への制裁に対する中国の不誠実な対応をみても、その関係が〝血の同盟〟といわれることがよく理解できる。

北朝鮮の兄貴分=中国が交渉の議長をするおかしさ

 もっとも、近年の北朝鮮の暴走ぶりに不快感を抱いてきた中国は、今回の弾道ミサイル発射にいよいよ態度を硬化させていると伝えられるが、どこまで真剣、具体的な策をとるのか。石油の輸出を全面的に止めるとでもいうならわかるが、まだ、そうした話は聞いたことがない。

 もちろん、中国が議長国として、6カ国協議を故意に遅延させたり、北朝鮮寄りの議事進行を図ったりしたという具体的な証拠はないが、経済制裁を無視したり、影響力行使を渋ったりしてきたことを考えれば公平な議事など求めるのが無理というものだ。

 そもそも、北朝鮮の〝兄貴分〟その核開発を断念させる交渉の議長国をつとめること自体、ちゃんちゃらおかしいというべきだろう。

 6カ国協議の起源が2002年の北朝鮮の核開発再開にあることはすでに触れた。米国は2国間対話で解決したい意向を持っていたが、当時、イラク攻撃を間近に控え(翌年3月に攻撃開始)、自ら解決する余力はなかった。〝数〟をたのんで、北朝鮮に圧力をかける目論見にくわえ、議長が中国なら北朝鮮も言うことを聞くという計算もあった。

 しかし、米国の思惑に反して、北朝鮮は核開発を継続、核、ミサイル実験を強行し、逆に米国はテロ支援国家指定解除など大きな譲歩も与える結果になってしまったのは皮肉なことだった。米国自身からは反省の声は伝わってこないが、6カ国協議こそ、「米外交の戦後最大の敗北」ともいっていい失策だ。

 中国は、今回の危機にあたっても、自ら主導権を発揮したいとの思惑から6カ国協議の復活をめざしているとしたら、無駄であり、むしろ百害あって一利なしというべきだろう。

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