2024年4月20日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2017年5月23日

米メディアの集中攻撃

 コミー長官解任によって、トランプ大統領にとってもう一つマイナス要因が生まれました。同大統領は米メディアからロシア政府との疑惑に関して集中攻撃を受けることになったのです。サウジアラビア及びイスラエルを歴訪しても、メディアの質問から逃れることはできません。

 司法省はロバート・モラー元FBI長官を特別検察官に任命しました。今後、米メディアは「トランプ対モラー」という対立構図を作り、トランプ大統領を悪役にモラー氏をヒーローに描くでしょう。今回のコミー長官解任が発端になって、同大統領は常にFBIとモラー特別検察官の言動を気にかけながら政権運営を行っていくことになります。

北朝鮮問題は米国民の目をそらす材料

 周知の通り、政権発足以来トランプ大統領は内政で成果を上げることができません。外交・安全保障問題においても同様です。習近平中国国家主席の影響力に期待をしているのですが、北朝鮮は核・弾道ミサイル開発を放棄しません。さらに悪いことに、今後米国民はFBI及びモラー特別検察官による捜査に一層の関心を払います。

 トランプ政権は北朝鮮問題に対して「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と主張してきました。ところが上のような状況では選択肢はかなり限られてきます。経済制裁の強化では米国民の目を内政及び疑惑捜査からそらすことができないからです。

 そこで、選択肢は軍事攻撃かキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長との首脳会談の2つに絞られてきます。キム氏との会談は同氏の評価を高めてしまうので可能性は低いという見方がありますが、軍事衝突を回避し、しかも米国民の関心をロシア政府との疑惑から外交・安全保障問題にそらすには米朝首脳会談は最も有効な手段であることは間違いありません。トランプ大統領がFBIとモラー特別検察官に追い込まれていけば、会談のカードを切る可能性は高くなります。


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