世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月2日

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 5月7日のフランス大統領選挙におけるマクロンの勝利について、フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのトニー・バーバーが、マクロンの勝利に安堵したが彼の仕事はこれからだ、という論説を5月8日付で書いています。要旨は次の通りです。

(iStock)

 マクロン支持者だけでなく、自由な民主主義には立ち直る力があると信じたいと思っていた世界の全ての人々が安堵の胸を撫で下ろした。グローバルな資本主義、ヨーロッパ、国の姿に対する際立って異なるフランス人の態度をあからさまにしたこの選挙で、半数以上の人々が開放、寛容、国際主義を選択した。

 しかし、マクロンの勝利は未完である。この選挙はかつてない位に極右に正統性を与えることになった。分断された政治状況、広がる社会的不満、将来に対する不安、大統領の地位の凋落がマクロンの5年の任期を1958年の第五共和制の発足以来最も困難なものにする。

 最初の試練は6月の国民議会選挙である。左右の政治的闘争という古臭い信仰をかなぐり捨てようとするマクロンの企てを伝統的な政党は阻止しようとしており、「前進」(注:マクロン新党)が多数派を形成出来なければ、マクロンはこれら政党に囚われの身となるであろう。多数派を形成出来なければ、マクロンの経済政策の中核であるプロ・ビジネスの施策、労働市場改革、国家の改造に関するマンデートには陰りが生ずる。しかし、彼には勝利によるモメンタムがある。「前進」は過半数には届かないものの、最大の党になり得るかも知れない。選挙の結果はどうであれ、工場、公共セクター、そして街頭での彼の改革に対する抵抗がより重大な挑戦となろう。

 選挙はルペンと急進左派のメランション、その他の過激な候補に広い支持があることを示した。フランス社会の大きな部分が高率の失業、停滞する生活水準、荒廃した郊外、人種的・宗教的緊張に絶望的になっている。国家主義者、反イスラム主義者、保護主義者がフランスの病の元凶だとしてEUとグローバルな経済秩序に凶暴な非難を浴びせている。マクロンはプロEUで国際主義の候補であった。彼の改革の成功は時間を要することを国民に納得させるためにはドイツの助けを必要としよう。ドイツはこれまで何度も新大統領から大きな変革の約束を聞かされて来た。しかし、ドイツにとってマクロン以上の人物はいない。成長指向の投資政策とドグマに囚われない財政政策をもってマクロンを助けて然るべきである。

 更に、マクロンの有権者とのハネムーンの時間は短いであろう。それはシラク、サルコジ、オランドの政策の失敗と個人的な問題の故に大統領の威光が落ちているためである。しかし、今後5年間に試されるのは単にマクロンの経歴にとどまらない。マクロン自身エリートの出であるが、彼はエリート層による政治的選択であった。崩壊した政党政治のモデルと社会的病弊を深刻に懸念した彼等にとって、マクロンは第五共和国に新たな生命を吹き込むために必要とされる若くて、才能に恵まれ、倫理的に汚れのない人物であった。もし、マクロンが躓くようなことがあれば、2022年にルペンを阻止する手立てに何が有り得るのか全く判らないことになる。

出典:Tony Barber,‘Relief in Europe but Macron’s victory is incomplete’(Financial Times, May 8, 2017)
https://www.ft.com/content/082decda-3350-11e7-99bd-13beb0903fa3

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