2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月2日

 決選投票でのマクロンの得票率は65.8%、ルペンは34.2%であった。マクロンの説得的な勝利と言えます。

2022年にはルペンを阻止する手立てがなくなる

 問題はこれからです。今回もルペンはガラスの天井を突き破ることは出来ませんでした。マクロンはエリート層が担ぎ出した切り札であったという趣旨の末段の記述の事情は詳らかにしませんが、もしマクロンが躓くことになれば、2022年にはルペンを阻止する手立てがなくなるという警告は不気味です。左右の大統領が出来なかった経済刷新を実行することが求められています。

 興味が持たれることの1つはマクロンの対EU政策です。あれほど「フランスはEUと共にある」「フランスはEUにあって強くなる」といったのですから、早晩何をやるのかが問われることとなるでしょう。選挙戦で、マクロンは、ユーロ圏には改革が必要である、独仏協力してユーロ圏を強化しないと10年後にはユーロは消滅するかも知れないと言ったことがあります。ユーロ圏には投資が不足しています。投資政策を持ち、投資をもって経済を刺激するために、次のような提案を口にしたことがあります。

 すなわち、「ユーロ圏はユーロ共同債の発行で調達する資金で賄うそれ自身の予算を持つ必要がある。この予算で成長のための投資を行うとともに、経済困難に陥った加盟国に対する財政支援を行う。この予算の執行のためにユーロ圏の財務相を設け、財務相はユーロ圏議会に責任を負うものとする」とのことです。

 しかし、この種の提案にドイツが反対することは明白です。ユーロ共同債のアイディアには断固反対ですし、経済政府を作ることにも反対です。ドイツから見れば、ドイツの資金を移転する枠組みにしか見えないのでしょう。にもかかわらず、マクロンはドイツの支援を必要としています。ユーロ圏の改革にしても、何か妥協出来る案はないか、模索する必要はあるでしょう。論説がいうように、マクロンを助けてやらないのなら、一体誰なら助けるのか、ということになります。

  
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