中国メディアは何を報じているか

2017年5月26日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2010年京都大学文学部卒業、2013年北京大学歴史学系大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

 ところで、郭氏はこのタイミングでなぜ王氏に関わる暴露話を、VOAでの生放送という非常に目を引く形でしたのか。さすがに大陸のメディアではこの辺の解説はしてくれないため、華字メディアの報道ぶりを紹介したい。

 香港の東方報業集団(オリエンタル・プレス・グループ)のニュースサイト「東網」は4月30日、「習、王、孟は郭文貴の国内の後ろ盾を厳しく処罰するとの共通認識に達した」と報道した。

 「郭文貴の中国共産党の十九大の前に『生きながらえ、財産を保ち、報復する』ための暴露行動には複雑な政治背景があり、画策している主要人物は郭文貴の国内の後ろ盾であり、目的は十九大の権力闘争だけでなく、さらに反腐敗運動の攻撃から逃れるためだと北京の上層部は確認した。習近平と王岐山、孟建柱(党中央政法委員会書記。郭氏は、王氏と共に孟氏の腐敗ぶりについても調査するよう命じられたとしている)はこの計画を完全に掌握し、決して妥協せず、郭文貴の国内の後ろ盾を厳しく懲罰することで一致した」としている。

 報道によると、政府中央は郭氏の後ろ盾のリストと、郭氏が彼らに利益を供与した状況を完全に掌握しているという。「王岐山は最近の内部の会議上で、中央は郭文貴の問題で、郭文貴から利益を得た『虎(大物)とハエ(小物)』を法により厳しく処罰するということで一致したと明らかにしている」という。

 また、北京の政治ウォッチャーの話として、「中央はもはや郭の海外での暴露を心配してはおらず、重点を国内の後ろ盾の調査に置いている」と紹介。「これは中国共産党が次の策として強硬戦術をとり、郭文貴に対する全面的な反撃を強化し、郭の行為を阻む様々な措置を取るということを意味している」と記事を結んでいる。

曽慶紅と王岐山の代理戦争か

 郭の後ろ盾は誰なのか。米国に本部を置く法輪功系のメディア「大紀元」は5月20日、「北京は郭文貴の『老指導者』に十九大前後に手を付けると決めた」という記事で、曽慶紅だと指摘した。

 曽氏は江沢民系の上海閥を代表する人物で、太子党の有力者でもある。強い権力を持つ曽氏の排除に習氏が乗り出すと、大紀元は前々から報じており、3月にはついに曽氏の追い落としに着手したと報道していた。20日の記事では、中国通の学者の発言を引用する形で、「郭の背後にいる老指導者は曽慶紅で、十九大前後に大『虎』が失脚するとすれば、曽慶紅が最初だ」としている。

 ところで大陸のメディアで、郭氏の腐敗ぶりを最も激しく追及しているのが財新だ。

 「郭文貴はいかに民族証券を買ったのか 馬建と張越との結託の内幕を暴露」(4月20日)、「郭文貴アメリカで提訴される 9年前の負債、元利はすでに8800万ドル」(4月25日)、「郭文貴の海外資金はどこから来たのか ブレア元英首相がかかわっていた」(5月25日)といった報道を続けている。

 財新を率いる女性編集長の胡舒立氏について、郭氏は過去に汚職で有罪判決を受けた北京大学方正集団の李友CEOの愛人だと発言。ケンカを売られていただけに反撃に出ているという面もあるが、そもそも財新の胡氏の背後には王岐山氏がいる。郭氏のバックが曽氏で、胡氏のバックが王氏だとすれば、メディアを使った郭・胡両氏の戦いは、曽・王両氏の代理戦争といえるだろう。

  
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