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2017年6月3日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『銀盤の軌跡』(新潮社)などの著書もある。

 先日、日本に一時帰国をすると面白いものが目についた。

 東京駅の大丸デパート一階の菓子売り場で、長い列が出来ている。今流行っている新しいお菓子は何なのだろうかと好奇心で覗いて見て、驚いた。

 カウンターの上には「New York City Sand」と英語で書いてあるではないか。

 私は日本生まれの日本人だから、このSandが実は Sandwichの省略であることは瞬時に理解した。

 だが、英語圏の人間が目にしたら、こう見えるのである。

 「ニューヨーク市の砂」

略してはいけない言葉

(iStock)

 英語にも、abbreviation(略語)はたくさんある。その多くは、BLT(Beacon, Lettuce and Tomato) とかVIP(Very Important Person) とか ASAP (As Soon As Possible)など、単語の頭文字をとって、アルファベットを並べてしまうやり方だ。

 あるいはMacDonald(マクドナルド)を Mac, Vegetable(ベジタブル)を Vege(ベジ)と呼ぶことなどもある。

 でも英語圏でPineapple (パイナップル)がPine(パイン)に、そしてSandwich(サンドイッチ)が Sand(サンド)に略されることは絶対にない。

 Pineと言えば松のこと。

 Sandは砂、という全く別な単語になるからだ。

 果物売り場で「松」を売っていたらびっくりするし、菓子売り場で「砂」を売っていたら、ギョッとするに違いないのである。

輸入できなかった商品名

 よく知られていることだけれど、カルピスが海外に輸出される際に、名前がCalpicoカルピコに変えられた。その理由は、カタカナで「カルピス」と言うとCow Piss(牛のおしっこ)に聞こえるからだ。

 一方、オリジナルの名前にこだわったのは「Pocari Sweat」である。

 Sweatとは、もちろん英語で汗のことだ。あなたは「汗」と文字の入った名前の飲み物を、飲みたいと思うだろうか。英語圏でSweatから連想されるのは真夏の汗臭さなどで、清涼感とは間逆のものなのだ。日系スーパーの売り場で時折見かけるが、手にしている外国人はまだ見たことがない。

 魚肉ソーセージなどのブランドに「ホモ・ソーセージ」という会社があるが、以前アメリカのナイトトークショーで「日本で見つけた面白い商品名」に取り上げられた。ホストが手にした現物をカメラの目の前に突き出して「Homo- Sausage!」と言うと、会場を埋めた観客たちが抱腹絶倒した。言うまでもなく、英語でHomoと言えば、「Homosexual」(同性愛好者)のことである。

 この商品、検索してみるとまだちゃんとあった。だが会社のウェブページに、このホモとは「Homogenize」(均質にする)という単語の略です、という丁寧な説明がつけられていた。

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