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2017年7月28日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

信用組合が注目

 東京都信用組合協会の八木秀男専務理事は「お金を貸すだけの地域金融機関から、中小企業を『育てる』金融機関への役割の変更が求められている時代の流れの中で、『交流会』は取引先のニーズに答えられるものだ。信用組合の職員も『交流会』で取引先企業のトップから経営課題を直接聞くことができて貴重な勉強の場になっている。これを是非とも定着させていきたい」と、高く評価する。9月21日には都内の主要な6信組と、60企業が参加する大規模な「交流会」の準備が進められており、その成果が注目される。

 東京都内に支店網を持っている大東京信用組合の品川支店は昨年11月に開催した「新現役交流会」へ、取引先であるスーパー「平野屋」を経営する堀江新三社長に参加を呼び掛けた。堀江社長はあまり気が進まなかったが渋々参加して、「新現役」8人と面談した。その中から三菱商事をリタイヤして小規模なスーパーの顧問をしている71歳の「新現役」に経営指導に来てもらうことにし、3回にわたりアドバイスを受けた。

 厳しく指摘されたのが、店内での部門同士のコミュニケーションが十分でないことだった。堀江社長は地元商店街の仕事などが忙しくて、店の経営を店長などに任せてきた結果、責任体制が明確になっていなかった。家族主義的な経営手法から、社長自らが社員に対してきちんと指示を出すべきだと直言された。堀江社長はこれまでコンサルタントなどに実務に基づかない指導が嫌いなため、部外者からアドバイスを受けなかった。しかし、近くにできた有力スーパーに客を奪われたこともあって、この数年間は売上が落ち込んでおり、「この減少を何とか食い止めなければと思っていたので、貴重な指導を受けて大いに参考になった。長年続けてきた家族主義的なやり方を急に変えるのは難しいが、指摘されたことを少しずつ実践しようと思う」とアクションを取ろうとしている。

 「交流会」に同席した大東京信用組合の菊島健二・品川支店長は「社長の話を通じて取引先の現場と中身を知ることができて、デスクワークだけでは分からない店の実態を理解できた」と話す。

海外展開の手掛かり

 「交流会」を契機に予想外の海外展開に手掛かりを得られた中小企業がある。品川区にある「フェラーリ」「フィアット」などイタリア車の自動車部品を取り扱う「ビオリー」(従業員20人)の久地岡正義社長が地元の信用組合の紹介で「交流会」に出てみたところ、イタリアの航空会社アリタリアに38年間勤務して退職した「新現役」の宅間武雄さん(68歳)に遭遇した。ローマにも駐在経験があり、現地での交友関係が広いことが分かり、3回の無料支援のあと早速、雇用契約を締結した。

大東京信用組合で行われたマッチングフェア

 久地岡社長は「『交流会』は思っても見ない素晴らしい人材との出会いだった。これまで国内仕入では困難な古い車等の部品調達やその輸送コスト軽減を考えていたところだったので、4月に宅間さんにイタリアに飛んでもらい、部品の卸企業と交渉した」と話す。部品の発注はこれまでは、日本の大手部品会社を通して発注していたが、宅間さんのおかげで、イタリアの卸会社と直接購入できるルートが開拓できた。これにより、「ビオリー」の顧客に対する信頼性が増し、社長の念願である増収増益にもつながる可能性がある。

 仲介した大東京信用組合の柳沢祥二理事長は「取引先の企業を手助けするために『交流会』は役立っている。地域の取引先にも『交流会』の良さを分かってもらうために動画を作成する」と、この手法にほれ込んでいる。

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