WEDGE REPORT

2017年7月28日

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思いもかけない人材

 保田代表は「各地で開催される『交流会』では、こうした思いもかけないような『宝の人材』に出会えることが数え切れないほどある」という。

 東京都板橋区で理美容師向けにハサミなどを手作りで製造している「ヒカリ」の高橋一芳社長は、12年に地元の滝野川信用金庫に誘われて仕方なしに「交流会」に参加したところ、ホンダを定年退職したエンジニアで、現役時代には2足走行ロボット「アシモ」の開発に携わった西川正雄さんと出会った。

 30人の職人が働く同社は、繊細な手作業が求められるプロ向けのハサミが作れるようになる技術の習得は経験と勘に頼っていたため10年も掛かっていた。それを西川さんが開発した道具を使うとわずか1週間でできるようになり、高橋社長は「『交流会』に参加したことで、思っても見なかった貴重な人材にめぐり会えた」と手放しの喜びよう。80歳になる西川さんは現在も週に1回ほど技術面のサポートをするため顧問として出社、ハサミを製造する機械の開発に携わるなど同社に取ってなくてはならない存在だという。

10万人以上のDB作り

 保田代表が起業した最大目的は、「無尽蔵」にある企業OBという人材の「宝の山」を「交流会」を介して民間企業にマッチングするための全国レベルでのシステム作りだ。そのために必要なことは、「どこからでもアクセスできる新現役データベース(DB)を構築して、登録者数を増やすこと。できれば3年以内に10万人以上にしたい。求人企業数も1万社が目標だ。これだけのDBが整備できれば、このDBと『交流会』を組み合わせることで、年間5千人以上の『新現役』とのマッチングを生み出し、人材難の中小企業に対して力強いサポートが可能になる」と期待している。

 「新現役」を登録するDBの制度は2003年に中小企業庁が作りクチコミで全国の企業OB約1万2000人が登録した。しかし、民主党政権の10年にこの制度は十分な新現役の活用手法や課題をもつ中小企業がシステム的に発掘できなかったこともあり「事業仕分け」で消滅してしまった。その後、保田代表の呼び掛けなどにより関東経済産業局管内で再び企業OBの登録制度と地域金融機関との交流会を開始、約1500人が登録した。しかし、人材登録制度が機能するためには地域金融機関とシステム的な連携と、交流会のような仕組みしかけ、多様な職種、能力を持った豊富な人材の登録数が求められる。

 このため、「1500人程度の登録人数では、地方で交流会開催を希望する金融機関や企業、新現役のニーズを満たすことはできない。また、地方都市は大都市に集中している、経験、技術、知識、知恵、人脈を持つ人材を必要としており、加えて中小企業の海外展開には、JETRO(日本貿易振興機構)、JICA(国際協力機構)だけでは地方のニーズはまかなうことが難しい。全国レベルでの人材の行き来が可能なシステムが地方創生にも不可欠である」と主張する。

 現在は約4100人の企業OBが登録しているが、保田代表は「これではまだ不十分で、DBの裾野を拡大することで、より広範囲の人材マッチングが可能になる。そのためにも、中小企業庁など国が主体の全国レベルで人材登録ができるようなDBを作ってほしい」と訴えかける。 

地域金融機関との連携強化

 もう一つのキーワードはこれまで築いてきた地域金融機関との連携だ。これまで、信用金庫、信用組合と連携してきたが、保田代表は「今後はさらに連携の範囲を広げて、第二地方銀行なども含めた、いまの3倍以上の250以上の金融機関との連携を目指したい」という。「交流会」を通じて地域金融機関が中小企業と深いつながりができれば、担保を取って貸し出すという従来の融資方式から、金融庁の森信親長官が掲げている「融資先の事業性評価」にも役立つ可能性がある。融資先の開拓に苦労してきた地域の金融機関にとって、伸びる可能性のある有望企業の発掘にもつながる。

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