海野素央の Love Trumps Hate

2017年6月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

グローバルリーダー不在の新世界

 2012年米大統領選挙における共和党候補指名争いの際、南部サウスカロライナ州チャールストンで反オバマ色の強い保守派の市民運動「ティーパーティー」のある活動家を対象にヒアリング調査を実施しました。この活動家は地球温暖化をまったく信じていませんでした。彼にとって地球温暖化は、リベラル派による「でっち上げ」でした。正にトランプ大統領の主張と一致しています。

 パリ協定離脱表明の背景は、ティーパーティー及び議会共和党保守派でティーパーティーの流れをくむ「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」の下院議員から支持を得ることができるという計算もあります。というのは、下院が弾劾訴追権を握っているからです。捜査の対象が自分に及ぶことを恐れているトランプ大統領は、地球温暖化対策に関して地球規模の利益よりも、「自分ファースト」の自己中心主義に基づいた意思決定を行ったと言えます。その決定により超大国としての信頼を失い、しかも孤立する道を選択したのです。

 今後、ロシアゲート疑惑でロバート・モラー特別検察官、FBI及び米上下両院の各委員会による捜査が本格的になると、トランプ大統領はパリ協定離脱表明で見せたように、選挙公約に忠実な言動をとり一層支持基盤固めに走る傾向が強くなります。その言動は米国の孤立を促進し、グローバルリーダー不在の新世界を生みます。

 パリ協定離脱表明で米国第一主義(アメリカファースト)に基づいた選挙公約を果たしていけば、「一人ぼっちの米国」になっていくことが明確になりました。仮にトランプ大統領がロシアゲート疑惑で罷免ないし辞任に追い込まれると、最終的に「一人ぼっちのトランプ」になる可能性も出てくるでしょう。

  
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