2024年4月19日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2010年7月26日

 いやはや。至福。 「××尽くし」的な食べ方をすると、ものによっては厭〔あ〕きてしまうし、あまり好まないのだけど、これは例外だ。調理法で表情を変える楽しさに酔った。お酒にも。

 翌日。下関に戻り、浪花に向かう。

 こちらでは直球勝負。板ウニ、つまり、板に盛って、売っているものを出刃包丁で豪快に半分に切って海苔とワサビを添えたもの。

 そして、これまたたっぷりとウニを盛り付けた軍艦巻き。

 なるほど。二日にわたって食べ続け、少し、見えてきたような気がする。

 アカウニなど、生食を前提のウニは、旅をさせてはいけないものなのだ。少なくとも、産地の取れ立てと、輸送されたものは別物だ。輸送や保存の技術も発達したから、以前のようにミョウバン臭いものばかりではなくなったとはいえ、出来たら産地で味わいたいと思われる美味。

 北海道のそれとの違いは、あちらが濃厚な旨みであるのに対して、こちらはより繊細にして、優しい旨さ。何年分かを一度に食べるような罰当たりをしてしまったが、それでも厭きぬのは、そのデリケートな旨さ故ではなかったか。若者向けではなく、年齢を重ねればこそ、見えてくる幸せをくれるような味わい。

 さて、満ち足りた。

 唐戸〔からと〕市場のあたりでも、散策するか。週末など、朝から歩くと、カジュアルなお寿司や鯨の竜田揚げ等々が朝食に楽しいところでもある。そのあたりを肴に朝から冷えたビールでも一杯、という禁断の楽しみも。

 そういえば、萩の海で加工作業を見せてくれた藤田さんの瓶詰めウニ(熟成して美味しくなるバフンウニ)をこの市場の近くのお店で売ると言っていた。それをお土産に買って帰り、炊き込みご飯か、海苔にのせて酒の肴か。真っ当な瓶詰めは、生とは違う濃厚な滋味。特に瓶詰め発祥の地、山口県の本場物は。留守番の家族も文句を言わぬ、はず。

寿司・割烹 浪花
山陽新幹線新下関駅から山陽本線で下関駅下車、徒歩約10分
山口県下関市細江町1-4-16  ☎083(231)0728
営業時間/11時30分〜14時、17時〜22時  定休日/日曜
ふくの河久(瓶詰めウニ販売)
下関駅からバスで唐戸下車すぐ 山口県下関市唐戸町5-1 ☎083(235)4129
営業時間/10時〜18時 定休日/日曜・祝日
萩の宿 常茂恵
山口県萩市土原弘法寺608-53  ☎0838(22)0150

◆ 「ひととき」2010年8月号より

 

 

 


 


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