オトナの教養 週末の一冊

2017年6月8日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――体の表面を見たあとは、何をするのでしょうか?

西尾:皮膚を切開し、皮下の状態や筋肉の前に出血があるかどうかを見ます。あとは、頭蓋、胸や腹を開け、臓器をすべて取り出し、各臓器を細かく観察します。

 こうした一連の司法解剖の手順は、法医学会のガイドラインでおおまかに定められています。

――1体解剖するのに、どれくらいの時間を必要とするものなんですか?

西尾:損傷の数が多ければ時間がかかりますが、私は、たいての場合概ね2時間位で終わります。解剖には性格が出ます。私のように2時間位で終わる人間もいれば、4~5時間かける先生もいると聞きます。どういう順序で解剖をしていけば、時間をロスせず、早く終わるか方法を自分なりに培いました。

――20年間、1年間200~300の遺体を解剖している中で、一番印象に残っているのはどんな遺体ですか?

西尾:小学校低学年くらいの少女が、見知らぬ男に刃物で殺害され、解剖室へ運ばれてきたことがありました。「綺麗な赤い服を着ていたんだな」と解剖台に寝かされた少女をよく見ると、それは服の色ではなく、血で肌着が真っ赤に染まっていたのでした。

 遺体を見てショックを受けることはあまりないんですが、この遺体だけは今でも鮮明に覚えていますね。やはり、子どもが亡くなるというのは死の意味合いが異なると思うんです。

――そうですね。人間はいつかは死にますが、幼いうちに亡くなるのは辛いですね。私自身は、この本を読んでいて都会で、しかも家の中で凍死するというのに驚きました。

西尾:それは他の方にも言われました。ただ、私のように法医学を専門にしていると、家の中で凍死するというのは珍しいことではなく、年間に10例ほどあるよくあるケースなんです。その辺は、ちょっと世間から感覚がズレているんでしょうね。

――そんなによくあるケースなんですね。

西尾:家の中で凍死するのは、2つのケースがあります。1つは、貧困状態にあり、ガスや電気が止められているため部屋が寒い場合。もちろん、食べ物がなく、非常に痩せているため、凍死しやすいケースです。

 もう一つは、貧困状態にはないけれども、ひとり暮らしの上に、たとえば脳出血などを起こし意識を失ってしまっているケースです。暖房をつけられませんし、救急車も呼べません。そして自宅で凍死するんです。

 凍死をした方によく見られる現象が「奇異性脱衣」です。凍死した遺体は服を脱いだ状態で見つかることがあります。1902年の八甲田山雪中行軍での凍死者の中にも、この現象が見られたとのことです。原因はハッキリとわかっていないところもありますが、脳の体温中枢が、凍死寸前に寒いにもかかわらず暑いと錯覚し、服を脱ぐのではないかと言われています。

――長年の解剖を通して、日本で起きる殺人の方法に特徴はありますか?

西尾:他国との比較はあまり詳しくないですが、アメリカだと銃による殺害が多いと言われますが、私がこれまで3000体近くの解剖の中で、銃によるものは5例あるかどうかですね。

 日本では、首を絞めたりと言った頸部を圧迫する殺害方法が多いです。

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