2024年4月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月22日

 提案は総じて妥当であり、おかしな考えではありません。しかし、オハンロンは楽観的にトランプ政権に期待をかけ過ぎのようにも思われます。多くの国はいかにトランプ外交が大事に至らないように注意し、これを補強していくかに心痛しているのが実情です。先の中東歴訪も何とか乗り切ったとの感が強く、あまり「成功」だったとは思われません。5月25日のNATO首脳会議でのトランプ演説が示すように、問題はトランプの基本理念や世界観が今一つ信頼できないからです。関与を通じて影響していく以外にありません。

 北朝鮮に関するオハンロンの考え方(凍結暫定合意を目指すべき等)も現実を考えれば基本的に穏当なものです。問題は、如何に中国を含め関係国のコアリションを作り、いかなる時点でこれらのカードを切り、如何にして北がそれを受け入れざるを得ない状況を作るかです。

トランプの瀬戸際外交的対応

 それにしても、ここ数カ月のトランプの瀬戸際外交的対応は、このままでは、米国の信頼性を損なったことになるのではないかと懸念します。このまま終わればトランプの政策は脅かしの言葉だけだったということになります。トランプのレッドラインや言葉は張り子の虎だと金正恩に思わせてはなりません。最近二つの空母が日本海に展開したようですが、きちっと軍事的圧力を継続、維持していくべきです。最低1~2年はこのまま続けるくらいの覚悟が必要です。日本もこのことを米国に言っていくべきでしょう。同時に、日本は自らの防衛力の強化を図っていくことが一層重要になります。

 オハンロンは習近平の協力に大きな期待をかけていますが、それほど楽観的にはなれません。中国外交は戦略の外交であると同時に、すぐれてディールの外交であり、常に注意が必要です。
TPPについては、トランプは、離脱が間違っていたことを早く悟るべきです。5月21日ハノイで開催されたTPP11(米国以外のTPP加盟11カ国)閣僚会議が協定の早期発効のためのオプションにつき協議を始めることに合意し、11月の次回会合までに取り纏めることに合意したことは良いことです。技術的には種々のやり方が考えうるでしょう。ベトナム、マレーシアを含め、何とか11カ国の間で発効するようにすべきです。

 オハンロンは、期待されるトランプの新しいアジア戦略は要するにオバマのリバランスが基本にあり若干の新しい要素を付け加えたものだと説明します。しかし、そのためにはトランプが歴代政権の政策の評価についてより正直になるとともに(何でも先人のやったことを否定し引っ繰り返すのではなく)、世界の現実を先ず謙虚に理解することが必要なのではないでしょうか。

  
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