海野素央の Love Trumps Hate

2017年6月21日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「ロシアゲート疑惑に対するトランプ大統領の対処法」です。米調査会社ギャラップ社の世論調査(2017年6月7-10日実施)によりますと、米国の方向性に関する共和党支持者の満足度は先月の58%から17ポイントも急落して41%になっています。6月8日米上院情報特別委員会でロシア政府とトランプ陣営の間に共謀があったのではないかという「ロシアゲート疑惑」を巡り、ジェイムズ・コミー連邦捜査局(FBI)前長官が宣誓証言を行いました。この「コミー証言」が影響を与えたといえそうです。

(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

 米ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領が特別検察官の捜査対象になったと報じました。さらに、捜査網が拡大したためマイク・ペンス副大統領が自身の弁護士を雇用したとも報じています。仮にそうであれば、コミー証言を境に局面が変わったといえます。本稿では支持者固めに走るドナルト・トランプ米大統領が、ロシアゲート疑惑に対してどのような対処法をとるのかについて考えます。

司法妨害をしたのはどちらだ

 一部の米メディアによりますと、トランプ大統領の私的弁護士チーム及び大統領顧問弁護士の双方が同大統領にツイッターの使用を控えるように提言しました。というのは、ロシアゲート疑惑に関して不利な情報を特別検察官並びに米議会の各委員会に与えてしまう可能性があるからです。ところが、同大統領は相変わらずロシアゲート疑惑に対する対策の道具としてツイッターをかなり積極的に活用しています。

 トランプ大統領は、オバマ前政権のロレッタ・リンチ前司法長官がヒラリー・クリントン元国務長官の私的メール問題の捜査に介入して不法な行為をしたとツイッターに投稿しています。そのきっかけになったのが、コミー前長官による証言でした。

 コミー前長官は、公聴会でクリントン氏の私的メール問題を巡るリンチ前司法長官との会話内容を明かにしました。コミー氏によりますと、リンチ前長官はメール問題に関して「捜査」ではなく「案件」という言葉を使用するように要求したと言うのです。リンチ氏の意図は明らかです。クリントン氏のメール問題の重要性を下げることにあったのです。

 今後、トランプ大統領及び同大統領の応援団であるFOXニュースや極右サイト「ブライトバート・ニュース」は、野党民主党に対してこの事実を柱にして戦います。ロシアゲート疑惑に対する対抗措置として、司法妨害を行ったのは同大統領ではなく、リンチ前長官であると主張していくのです。

原点回帰をするトランプ

 初外遊でロシアゲート疑惑から国民の目をそらすことができなかったトランプ大統領は、帰国すると原点に立ち戻り、経済及び雇用で成果を上げて支持者をつなぎ止める戦略に出ました。中西部オハイオ州及びウィスコンシン州でインフラ整備並びにオバマ前大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)廃案を訴えました。

 そのうえで、トランプ大統領はツイッターを通じて、民主党は米国民に対して経済、税金制度改革並びに雇用に関するメッセージが皆無であると痛烈に批判しました。同大統領は、民主党はオバマケア廃案を「妨害」していると断定し、彼らを「単なる妨害者」と呼ぶのです。その狙いは、支持者に司法妨害の「妨害」という言葉を使って、民主党こそが妨害者であるという意識を植え付けることにあります。

 トランプ大統領の原点回帰をもう一つ紹介しましょう。同大統領は昨年の大統領選挙の争点となったクリントン元国務長官の私的メール問題を再度持ち出し、同元国務長官は起訴を免れたとツイッターに投稿したのです。ロシアゲート疑惑に関して捜査を行っているのに、同元長官のメール問題を徹底的に解明しなかったのは「不公平だ」というメッセージを支持者に送っているのです。

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