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2017年6月21日

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冨山和彦 (とやま・かずひこ)

経営共創基盤CEO

1960年生まれ。東京大学法学部卒。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、CDI代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。パナソニック社外取締役、経済同友会副代表幹事などを務める。

 これは経営者候補を選ぶ日本の人事部の、自信のなさを表している。人事部は経営者候補を、大きな失敗のない部署に送り、海外では成功が約束されている市場を任せて〝社長候補にふさわしい〟実績をつけさせてきた。

 しかし実績があがっているとしても、それはその個人の能力によるものではなく、その企業自体がそれまで作り上げてきたビジネスモデルが優れているからにすぎない。管理職という仕事で付加価値をつけることは容易ではない。そのことを日本企業は認識していない。

 東芝問題では、歴代社長が財界へと続くエリート街道を歩んだことで、後継社長も財界トップを狙う野望を抱いたことが悪影響を及ぼした。本来、引退後の名誉あるポストを狙う彼らの利益と会社の利益は一致するはずだが、在任中に損を出すわけにいかない、という短期的思考に陥ったことで、不正会計を招いてしまった。

 経営者になるためには、何より「経営者としての経験」が必要となる。それはトップとして決断を下し、その責任を自ら負う経験こそ経営者に必要だからだ。経験があれば、部下など周囲からもたらされるシグナル(反発)を見落とさず決断を下すことができるようになる。例えば部下の反発も、部下個人の利益を減少させたことに対する怒り(私憤)なのか、組織にとって大きなリスクを伴うもの(公憤)なのかの選別も、一上司ではなく、経営者として経験しないと、いつまでもわからない。

 まず日本企業の経営者が後継者を育てるために、なすべきは2つ。40代、50代、60代の社員の中から、年齢を問わず次の経営者を指名すること、そして、長期的に候補者を育成する仕組みを作ることだ。これまでの経営者育成システムでは、後継者候補も少ない。自らの後継者はまず幅広い年代から選ぶことが必要だ。

 何より、今後は経営者を年代問わず指名していくことをハッキリと人事で示すことは、社員への強烈なメッセージとなる。難しい制度論をこねくりまわすより、経営陣を選ぶ際にもこれを繰り返すことが、何よりもリーダーを目指す社員のモチベーションをあげる。

 「若い経営者を選んだら年上の経営陣のモチベーションが下がるのでは」といった声をよく聞くが、私の経験から言ってそれは違う。今の経営トップはそんなにおいしいポジションではない。イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズなどの海外の経営者と1対1で交渉し、決断し、その責任を負い、休みはなく、24時間365日メディアの悪口におびえる(笑)。

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