WEDGE REPORT

2017年6月21日

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冨山和彦 (とやま・かずひこ)

経営共創基盤CEO

1960年生まれ。東京大学法学部卒。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、CDI代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。パナソニック社外取締役、経済同友会副代表幹事などを務める。

 多くのエリートは、社長でなく、副社長くらいにおさまりたいと思っているものだ。経営者を選ぶことは負けられない戦いの司令官を選ぶ作業と同じで、これまで「長く忠誠心を持って勤めてくれたことへの感謝」で選ぶわけではない。ただ、社長、CEOというポストが年功序列の人事制度の中で上がってきた「最後のご褒美」だと思っている人はいまだに多い。

 経営者人事で会社全体に今後の方針を示した後は、経営者候補の人事運用を、それ以外の一般社員の運用とは分ける必要がある。経営者は10年に1人出れば良い。候補者は大企業でも各年代で10人程度しかいないだろう。全ての年代合わせて40~50人の運用を別にし、経営トップと数人の取締役が直接管理すると良い。決して難しい話ではない。

 経営者候補は35歳くらいから選ぶと良い。例えば日産自動車のカルロス・ゴーン会長は大学卒業後、タイヤメーカーの仏ミシュランに入社した後、30歳のときにはハイパーインフレにおそわれて大きな赤字を出していたブラジル・ミシュランCOOとなった。その後彼は同社を立て直し、42歳でルノーからヘッドハンティングを受けた。年功序列で昇進し、60歳でやっと経営者になる日本企業の経営者とゴーン氏とでは、経験の蓄積が違う。

写真を拡大 (出所)帝国データバンク「全国社長分析」(2017年)を基にウェッジ作成 (注)2016年12月末時点のデータ。30歳未満は0人

 そもそも人間は40歳を過ぎたあたりから労働生産性が下がっていく。35歳まで目的なくジョブローテーションをさせて半自動的に管理職にする仕組みでは、付加価値を生み出す社員を作るのは難しいだろう。それより、できる限り「こいつのグローバルでの生産管理は全社トップクラスだ」という強みを持たせるような人事運用をしたほうが良い。

 経営者候補となった人材に必要なのは前述したように「経営者としての経験」だ。そして、それは「修羅場」でなければならない。例えば大企業なら、経営環境の厳しく、人材も乏しい海外関連子会社をたくさん抱えているだろう。その関連子会社を任せることで、決断の結果や責任が全て自分に降りかかってくる状況に追い込むことができる。そこまで追い込めば、人間は腰を据えて前に進んでいくものだ。

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