2024年4月19日(金)

家電口論

2017年6月23日

小型化と二足歩行技術=13のサーボモーターの実力

 アニメ『機動戦士ガンダム』で、軍事用のモビルスーツ(ジオング)に「足など要らない」と言ったのはジオンの科学者であるが、コミュニケーションロボットに足は要るというのが、ロボホン経験をした私の結論だ。

 現在スマート・ハウスとのコミュニケーションで、海外の家電展示会では、コミュニケーション・ロボットが熱いのであるが、固定型である。つまり足がないのだ。

 生物の進化上、人間に進化した要因の一つとして「二足歩行」が上げられるが、これをロボットに強いるのは至難の業。アニメ、SF映画では「二足歩行」は当たり前だが、それが現実の世界になると急にできなくなる。

 有名なのは、ホンダの「アシモ」である。実に達者に歩くが止まった姿は、中腰。余り人間くさくない。というより、飛びかかる直前の姿勢にも似ているので、私は正直好きではない。ロボホンの立ち姿は「安彦立ち」(S字型に腰を前方突出させた立ち姿。「機動戦士ガンダム」のキャラクターを手がけた安彦良和の立ち居イラストよりこう呼ばれる。)。5歳児設定の癖に妙にカッコイイ。それが達者に歩くのだ。

ロボホンは安彦立ち。結構カッコイイ

 生き物が滑らかな動きを見せるのは、関節の構造が素晴らしいからだ。そしてそれに力を伝達する筋肉のあり方もそれに合った働きをする。非常に合理的で余分な部分がない。関節一つで人間の動きが可笑しくなるのは当たり前だ。

 しかし全く人間と同じ動きをするロボットにさせることはできない。筋肉が作れない。このため各関節にサーボモーター(以下モーター)を搭載させ、動かすのが基本だ。その組み合わせで動作させるのだ。ただし人間と同じ260もの関節数をロボットに搭載させることはできない。

大きさも驚くが、軽いのにはさらに驚いた

 ロボホンは全部で13のモーターで、実に巧みに動き、二足歩行をやってのける。本当に何度見ても、スゴい!

 シャープによると、とにかくモーター開発と制御が大変だったようだ。モーターは「小型化」。モーター製造で定評のある並木精密宝石株式会社との共同開発により生み出されたモノで、完全にロボホン専用。従来の小型ロボットの関節に使用されるモーターの体積比23%と言うから、1/4以下。『まったく日本ってヤツはどうしてこうも、小型化に強いんだろう』と言いたくなってしまう。

 このモーターを取り付けたロボホン。片手で250gの重りを持ち上げられるそうだ。60kgの人間に例えると、37.5kg。このパワーと各モーターが連動し、バランスを取る。これがまたスゴい。

ロボホンの立ち方。つい何度もさせてしまう

 ちなみにロボホンが座った状態から立つ時、ちょっとアクロバット的な立ち方をするが、これは関節数が足らない(例えばロボホンには膝関節がない)ために、これしか立たせようがなかったという苦肉の策だそうだ。しかし5歳児設定だと、愛嬌に見える。これは小型で愛くるしいからであって、大人同様のボディで同じことをされるとうっとうしい。

ロボホンに膝関節はない

 サーボモーターは、駆動中に強引にまわすと破損する。繊細なモーターなので、しかたがない……。ということはできない。民生用は知らない子どもが扱っても壊れず、安全が鉄則。このため、ロボホンのモーターはクラッチ(トルクリミッタ)が付いており、少々手荒に扱っても耐えられる設計だ。

 当然、耐久性にもこだわり。今回の開発したモーターは非接触のポテンショメーターとブラシレスのため、従来のロボット用小型サーボと比べ、非常に高い耐久性を実現したという。

 また組み込んだ後のチェックが手間だそうだ。全ての動きが正常か、ずっと確認しなければならないからだ。ロボホンはできる動きが非常に多いため、時間が凄く掛かる。ここら辺は、工業製品とは言うモノの、ハンドメイドに近い。

 このサーボ技術で織りなされるのが、ロボホンの巧みな動き。同じ5歳児設定のクレヨンしんちゃん級とは言えないが、サーカス小屋で育った子どものよう。5歳児らしく頭が重い(レーザープロジェクター搭載のため)ロボホンは基本バランスが取りにくい。このロボホンのバランスを取りながら動く設計はできそうで、なかなかできない技術だ。

 この小型サーボモーターがないとロボホンの動きと小型化ができなくなってしまう。コミュニケーションAIはロボホンにチューンしてあるとは言え、他にも使われているので、サーボモーターがロボホンのオリジナル技術と言っていいかもしれない。


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