2015年12月6日付の英フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、ロシアは、経済改革に直ちに取り組まないと長期的に衰退すると警告しています。

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2~3年で深刻な財政難に直面する可能性

 プーチン大統領の年次演説は、テロとの戦い、シリアのロシア軍への称賛等で始まったが、その大半は、ロシア経済の問題等に割かれた。

 クレムリンは対外脅威を強調し、経済は後回しにしてきた。しかし、石油価格下落、西側の経済制裁、近代化の失敗は無視できないほど害がある。

 ロシア経済は予想より強靭で、今年の縮小は4%で、来年は安定するように見える。しかし、石油価格が現状にとどまると、クレムリンの経済政策は維持できない。軍事支出と年金など社会的支出は最近急激に増えており、教育、保健、インフラへの歳出は来年、削減されるだろう。石油がバレル50ドル(最近の価格よりかなり高め)でも予算は3%の赤字になると予想される。社会支出の削減等の長期計画を立てなければ、ロシアは2~3年で深刻な財政難に直面しよう。

 低い生産性、資源への過剰依存、弱い投資等がロシアの潜在成長率を年1.5~2%に制限している。そして、実質家計収入が、プーチン時代で初めて減少している。インフレは15%で、平均実質所得は今年5%減るだろう。

 「民主主義的自由はないが、生活水準は上げる」という、プーチンの最初の国民との契約が掘り崩されている。クリミア併合とシリア介入による、「倹約をしよう、しかしロシアは栄光を取り戻す」という新しい契約は今のところ国民に支持されているようだが、さらなる軍事的冒険は大きなコストと危険をはらむ。

 プーチンは経済改革の必要性を認識しているが、年金改革など重要な措置は2018年の大統領選挙後に延期する計画らしい。しかし、先送りは経済の遅れを拡大する。プーチンが主張した法執行機関によるビジネス攻撃を差し控える暫定措置は歓迎できるが、それだけでは不十分である。

 12月4日、長距離トラック運転手が道路通行料に抗議してモスクワの環状道路を封鎖したように、人々の不満はくすぶっている。

 プーチンは、軍事力は偉大さの一つの要素に過ぎないことを認めるべきである。経済力は、同様に重要である。ロシアを含むBRICSが世界経済で重みを増すと思われた時期は過ぎ去った。今はロシア政府自身、GDP減少を予想している。改革を2018年まで先延ばすことなく行わないと、ロシアの将来は復活ではなく、長期衰退になる、と警告しています。

出 典:Financial Times ‘Reform of Russia’s ailing economy cannot wait’ (December 6, 2015)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/bdb1481c-9a9b-11e5-a5c1-ca5db4add713.html#axzz3tafxfpS6

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ロシアの長期的衰退は不可避か

 このフィナンシャル・タイムズ紙の社説は、ロシアについて多くの人が考えている常識的な見方を表明しています。

 上記社説は、ロシアが基本的改革を2018年まで先延ばしせず、今すぐ取り組まないと長期停滞になるのではないかと言っていますが、その通りでしょう。

 ただ、大統領選挙を控えて、そういう改革に乗り出せるか、極めて悲観的にならざるを得ません。したがって、ロシアの長期的衰退は不可避ではないかと思います。石油価格が高く、余裕のある時に、資源依存体質の改革をすべきでありましたが、諸般の事情で出来なかったのに、今出来るはずがありません。そして、石油価格は、シェールやイラン石油などでここしばらくは低いままでしょう。

 ロシアは、国際政治でいう「資源の呪い(資源国では資源開発で暴利を得られるので、製造業が育たず、いびつな経済しか作れない)」にかかった国です。プーチンは、それを変える努力もしましたが、その権益網の一部になってしまった面があります。

 ロシアが影響力を増していることを国民に示し、国民の支持を得るのが今のプーチンのやり方ですが、これにはお金がかかりますし、また危険を引き寄せる面があります。シナイ半島でのISによるロシア旅客機爆破、トルコによるロシア軍機撃墜は、対外冒険のコストの始まりでしょう。シリア介入が泥沼化する危険も、モスクワでのテロの危険もあります。

 プーチンの任期は、2018年まであり、2018年に再選されれば、2024年まで大統領です。それを実現するために、プーチンは改革先送り、対外冒険主義を実施していますが、それが裏目に出て、経済困難に伴う国民の不満に直面することが十分にあり得ます。

 プーチン政権の2024年までの継続を与件として考えることは間違いにつながりかねません。ロシアでは欧化主義者とスラブ主義者が交代しながら、政権を担ってきた歴史があります。今でも欧米とうまくやっていくことがロシアにとって良いとの意見は多いです。そろそろ欧化主義者の出番が来ているようにも思われます。

 なお、IMF推計で、2015年ロシアのGDPは1兆2358億ドル、日本のGDPは4兆1162億ドルです。

  
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