1月2日に「武装勢力」がオレゴン州北部にある野生動物保護センターの建物を占拠、「連邦政府は所有する土地を州政府もしくは地方自治体に返還せよ」と訴えた。アモン・バンディという男性をリーダーとした20人ほどのグループが建物を占拠して1月20日で18日を迎えた。

 事態が長引いているのは、保護センターが最寄りの都市から50キロも離れた荒野の真ん中にあり、武装勢力とはいえこれまで発砲沙汰もなく平和な占拠であること、司法当局も平和的解決を求めている、など主にこれといった被害がない、という理由だ。

住みやすい街として知られるオレゴン州ポートランド(iStock)

放火の罪に対する抗議

 そもそもアモン・バンディなる人物はネバダ州出身。なぜオレゴンで行動を起こしたかと言うと、「ハモンド裁判」の結果に抗議するためだ。ハモンド裁判とはドワイト(73)、スティーブン(46)のハモンド親子が放火の罪で連邦政府から5年の懲役を言い渡された裁判のことだ。親子は連邦政府の土地をリースして牧畜を行っていたが、2001年に借地に火を放った。裁判の過程で当初は「牧地に雑草などが侵入するのを防ぐため」火をつけた、としていたが実際は政府の土地で禁じられた狩猟を行い、証拠隠滅のための放火だったことなどが判明している。

 連邦政府の土地に放火した場合、自動的に5年の懲役となるのだが、被告側はこの制度を「憲法違反」として争ってきた。最高裁まで争われたが、最終的には被告の訴えは棄却された形で2015年に結審した。

 バンディの父親もネバダ州で連邦政府の土地を借りて農業を営んできたが、「連邦政府が州の土地に所有権を持つのはおかしい」として借地料を20年以上にわたって滞納、その総額100万ドル以上となっている。こうしたことから「連邦政府は土地を州、地方自治体に返却せよ」との訴えにつながった。バンディは「我々の意見に賛同する人は全国どこからでも歓迎する」とし、実際に他州から「武装勢力」に加わった輩もいる。

 ただし、ここに来てこの一味に反対する団体も保護センター付近に集結、「集団はただちにこの地を去れ」とのデモ行動を起こしている。バンディ一味は「オレゴンの人々を連邦政府の圧政から保護するため」立ち上がった、としているが、実際にしていることは「ただの迷惑行為」で「不法に公共の土地を占拠している」というのがその主張だ。

 中心となっているのはアリゾナ州のバイオロジカル・ダイバーシティ・センターのキーラン・サックリング氏。保護センター近くに「道化のバンディ一味は去れ」「武装による占拠はアンアメリカン(UnAmerican)な行為」などのプラカードを掲げた。サックリング氏は「政府所有の土地問題に関心がある人は、ここに来て占拠集団に異議を唱えるべきだ」と語る。すでに200以上の賛同のメールが来ており、現在十数人の「占拠反対グループ」は500から1000人規模に膨らむ可能性がある、という。

 政府が国有地とする土地は国立公園のほか、農地、山林、鉱山など多岐にわたる。環境保護が目的だが、バンディ一味が主張する「政府が山林を明け渡せば地方の木材業が潤う」といった意見は以前からある。実際にバンディ一味に同調する動きもあるが、サックリング氏は「賛同勢力の一部は企業の支援を受け、国有地払い下げで利益を得るグループで、騒動が大きくなり連邦政府が国有地明け渡しを決定すれば『環境問題にとって最大の危機』が訪れる」と指摘する。

 客観的に見ればそのような壮大な目論見というよりもバンディの父親のような私怨に基づく行為、と見れなくもない。きっかけとなったハモンド裁判にしても、放火が犯罪であるのは明白で、焦点となるのは「連邦政府の土地への放火は懲役5年」という条文の正当性のみだ。

セックス用玩具の差し入れを要求

 バンディ一味にしても、ヒーロー気取りだったのが地元の共感も得られず、振り上げた拳の下ろしどころに苦慮しているのは明らかだ。主張は次から次へと変わり、占拠終了の条件も当初は保護センターのある「ハーネイ郡の住民が出て行け、というなら出て行く」だったものが、地元住民との会合で「出て行け」と言われるとあっさり撤回した。「食べ物、暖かい衣服、セックス用玩具の差し入れを」という意味のわからない主張もあり、サックリング氏の言う「道化集団」という見方が米国では広がっている。

 数年前の「99%デモ」と言われたウォールストリート占拠などとは違い、全国に広がる政治的インパクトもなければ普遍的主張もない。一体この騒動、どんな決着を迎えるのだろうか。

  
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