中国専門家で米シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)の上級顧問をしているボニー・グレイザーが、1月6日付のCSISのサイトで、北朝鮮の核実験への中国の対応について、インタビューに応える形でコメントしています。要旨は以下の通りです。

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Q.今回の核実験に対する中国外交部の公式声明は、特に厳しいものだったのか。

 そうとは言えない。中国外交部の声明では、北の核実験に「断固反対する」と述べた他、非核化へのコミットメントを守ることを「強く」主張し、「状況が悪化するような措置をとるのをやめるよう」呼びかけた。これは2013年2月の(3回目の)核実験の際に出された声明の言い回しと実質的に同じものだ。ただし、2013年の声明に含まれていた「各国に冷静な対応を呼びかける」との一文が、今回は含まれていない。

Q.中国は制裁強化を支持するだろうか。

 中国は新たな制裁を含む国連安保理決議に参加する動きを見せている。それに、中朝国境間の車両検査や中国領空を飛行する貨物に対して、より綿密なモニタリングをするなど、従来よりも厳しい措置をとることに自発的になるかもしれない。その一方で、安定性を危険に晒したり、経済的・政治的崩壊を招いたりしかねない行動、国境付近への米軍の配備などには賛同しそうもない。

 最初の核実験以来、中国は北朝鮮に対する圧力の必要性を認めているものの、制裁だけで非核化が可能だとは考えていない。中国としては、制裁は戦略の一部であり、「グランドバーゲン」には安全の保証や、経済支援、日米からの外交承認なども含まれうると考えている。

Q.核実験に際し、中国の懸念は何か。また、この機会をどう捉えているか。

 中国指導部にとっては、国内の安定性維持が常に重要である。核実験は中朝国境から約100kmの地点で行われた。中国北東部では実験による地震が観測され、大気、水質、土壌汚染などを引き起こしている。中国外交部はモニタリングの結果、異常がないと通知したが、中国指導部にとっては、ネットなどでの共産党批判に繋げないことが最優先事項である。

 同時に、中国は、北朝鮮による核実験を、対米関係を改善する機会として利用しようとしている。国連による制裁を支持することは、中国は国際法を支持しているとの意思表示である。米中間には、サイバー攻撃による知的財産権の窃取や、南シナ海での摩擦が続いている。そうした中で、核実験への対応を、米国との限られた協力機会として利用しようとしている。

Q.中朝関係への影響はどうか。

 4回目の核実験で中朝関係はさらに悪化するだろう。実験に際し、中国側は何も通告を受けていなかった。習近平は、北朝鮮との関係改善にいかなる政治資本を投じようとも思っていない。実験を受けて、習近平は韓国との関係を発展させるほうが正しいとの確信を強くしているはずだ。北朝鮮の核計画に変化がなければ、習近平はその任期が終わる2022年末まで、金正恩と会おうとしないかもしれない。

出 典:Bonnie S. Glaser ‘China's Reaction to North Korea's Nuclear Test’(CSIS, January 6, 2016)
URL:http://csis.org/publication/chinas-reaction-north-koreas-nuclear-test

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安保理制裁決議の実効性は中国次第

 上記では、中国は国連安保理では制裁措置に参加する動きを示しているが、実際にどこまで制裁措置を遵守するかはよくわからない、と指摘しています。この指摘は、的を射たものと言えるでしょう。

 今回の北朝鮮による核実験に対する中国政府の公式声明は、前回2013年の核実験の際と比較して、その言い回しは実質的に同じものであり、唯一の違いは「各国に冷静な対応を呼びかける」とする部分が含まれていないだけです。

 中国にとっては、中国の思う通りにならない北朝鮮を苦々しく思っているのでしょうが、だからと言って、北朝鮮の体制が崩壊したり、ひいては、中国の体制維持を脅かしたりすることは、何としても回避したいに違いありません。

 北朝鮮と中国とのギクシャクした関係は、近年では、北朝鮮指導部の親中国派と言われた張成沢の処刑などをめぐり強まってきていますが、中国が依然として、北朝鮮にとって石油、食料の主たる供給源であることに変わりはありません。最近も、安保理による対北朝鮮資産凍結の制裁対象とされている北朝鮮の貨物船を、中国企業が購入したとの報道がなされていました。

 国連安保理の制裁決議も、中国が実効性の上がる措置に協力しない限り、しり抜けになってしまうという実体は変わっていません。

 米国は、今回の核実験のあと、中国に対し、中国の対北朝鮮制裁措置が実効性を上げるよう圧力をかけていますが、日本としても、中国に対し、これまでと異なる制裁措置をとるように働きかける必要があるでしょう。

  
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