2019年10月20日(日)

電気事業連合会

2019年3月20日

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 資源小国の日本が持続可能な発展に必要なエネルギーを確保しなおかつ脱炭素化で世界に貢献するためには、原子力が欠かせない。日本の原子力発電所の大勢が運転開始後25年以上経過するなか、原子力発電所の長期運転に向けどう対応していくのか。専門家に話を聞いた。
関西電力(株)高浜発電所1、2号機

原子力発電所の長期運転に向け 最新技術で対応する

 2019年1月末現在、日本には廃炉申請したものを除き38基の商業用原子炉が存在する。その大半が東日本大震災後に運転停止となり、現時点で再稼働したのは9基のみ。震災前の2010年度に日本の電源構成の25%を占めていた原子力発電は、2017年度には4%となった。(図1)

 一方、政府は昨年7月に発表した第5次エネルギー基本計画において、「可能な限り原発依存度を低減する」としながらも、国際社会が求める脱炭素化、およびエネルギー自給率の回復実現に向けて原子力が不可欠であることも示唆している。再稼働は今後、徐々に進むことになるだろう。

 そうなると、気になるのは原子力発電所の「長期運転」である。日本の原子力発電所は運転開始後25年以上経過したものが大勢で、再稼働した原子力発電所は長期運転が見込まれる。安全対策はどうなるのか。原子炉工学・リスク学を専門とする東京大学の山口彰教授に聞いた。

山口 彰 氏 Akira Yamaguchi 東京大学 大学院工学系研究科 原子力専攻 教授 1979年東京大学工学部卒業、1984年同大学院博士課程修了(工学博士)。動力炉・核燃料開発事業団(現 日本原子力研究開発機構)主任研究員、大阪大学大学院環境・エネルギー工学専攻教授を経て現職。原子力規制委員会新規制基準検討チーム委員、文部科学省原子力科学技術委員会委員長、日本原子力学会リスク専門部会長、国際PSAM組織委員会理事などを務める。専門は原子炉工学、リスク評価など。

 「福島第一原子力発電所の事故を受けて策定された新規制基準は大変厳しく、常に最新の技術を取り入れて設備を更新しなければなりません。運転中の発電所もその対象です。また、予想を超える重大事故への対策も義務づけられ、事業者自身のリスクガバナンスの再構築も進みました。つまり、規制側と事業者側が共に安全性の向上を目指していて、原子力発電所は劣化するというよりは、むしろ進化しているのです」

 もともと日本の原子力発電所は長期運転を見越して余裕を持たせて設計され、運転開始後も日常点検に加え、13カ月ごとの定期検査等を実施。30年目にはより幅広く詳細を確認する高経年化技術評価を行い、以降10年ごとの再確認が定められていた。そのうえで、新規制基準により運転期間を40年に制限。特別点検や劣化状況評価等を実施し認可された場合のみ、1回に限り最大20年の延長が許されることになった。現在、高浜、美浜、東海第二の各発電所の4基が運転期間延長の認可を受けている。

 「この40年というのは安全性を評価するための区切りであって、老朽化による耐用年数ではありません。航空機もそうですが、一般的に原子力発電所などの産業設備に寿命という考え方は馴染まないのでしょう。その時点の最新技術で点検と評価を行って、機器の補修や交換、運転の手順や制御方法の更新といったメンテナンスを繰り返すことで常に最新の状態を保つのです」

エネルギー安定供給のため 地球規模の「安全文化」確立を

 世界的に見ても原子炉は長期運転の傾向にある。米国にも40年の認定期限があり、申請により20年の延長が可能で、更新回数に制限はない。運転期間は費用回収の側面から定めるものとする考えが基本にあるからだ。現在、運転中の原子炉のうち87%の86基が60年運転の認可を更新済み。(図2)昨年はここからさらに6基が、80年運転に向けて2回目の更新を申請した。

 「日本が持つ世界トップレベルの安全技術も含め、各国で積み上げられてきた長期運転の実績やデータ、評価技術を国際社会で共有し、活用することが重要です。実際、世界原子力発電事業者協会(WANO)等の機関がそうした情報交換の場となっていますし、こと安全対策については規制当局も、産業界も、学術界も、同じ目的でグローバルに結束しているのが現在の状況です」

 そうした専門家が知恵を持ち寄り、考え得るあらゆるリスクを洗い出して危機回避のシナリオを書く。いわば国際的な安全文化の醸成に向けた動きが進んでいるという。

 「もう一つ重要なのは、プラントの実態を隅々までよく知る事業者の技術を活かし、事業者から情報を発信することです。それでこそ、規制当局と事業者が良好な緊張関係を持って対話を交わし、安全性をより高めることができるのだと思います」

日本原子力発電(株)東海第二発電所

 その意味で、昨年7月に事業者、メーカー、関係団体が参加して発足した原子力エネルギー協議会(ATENA)への期待は大きいと、山口教授は言う。原子力産業界全体の知見とリソースを活用し、規制の枠に留まらず、自律的・継続的に安全性向上に取り組むことを推進する組織である。

 日本のエネルギー自給率はわずか約8%。電力安定供給のためにも、政府は2030年度時点のバランスの良い電源構成として原子力を22~20%程度に定めた。(図1)

 「どの電源にも一長一短がありますが、全国民に確実に、安全にエネルギーを届けるという大前提の目的を忘れてはいけません。そのために、どれか一つに依存せず、すべての選択肢を残して課題解決を続けることが、日本の取るべき戦略でしょう」

 その一角を原子力が担っていくうえで、「長期運転」対策を施した原子力発電所を活用することは必要不可欠である。