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2019年7月1日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

 まず樹齢40~60年の伐りどきのスギ林が多く、需要も急増中。価格も上昇傾向だ。宮崎県の木材価格は数年前から2~3割アップしていた。

(出所)農林水産省「木材需給報告書」 写真を拡大

 ただ所有が小規模で地権者の所在の不明な森林が多いため、まとめる役割が必要だった。そこで仲介者が登場する。「昔は、山林事情に詳しい地元の人が仲介した」(代々続く林業家)というが、今は新参者が増えた。所有者の了解が得られない、あるいは面倒となると、無届けや伐採届の偽造に手を染める者も現れる。伐採業者も、伐れる山の確保を優先しがちだ。

 そして監視体制もない。所有者は見回りをしなくなり、行政のチェックも機能していない。伐採届は記載事項の確認だけにとどまる。また誤伐と主張されれば民事となり介入しない。

 警察が動きたがらない一因に立件の難しさもある。相続手続きや境界線未確定の山林が多いのだ。しかも無断伐採から長時間経っていると証拠が得にくい。仲介者や伐採業者は伐採届の転売を繰り返して責任の所在をわざと複雑にしていた。民事訴訟で訴えても、境界線が明確でないと伐られた山が原告の所有だという証明が足りずに棄却されるケースが目立つ。

 一体、宮崎県に伐採業者はどれだけいるのだろうか。「法人じゃないところも多く、正確な数はわかりません。県外それも静岡や愛知の業者もいました」というのは、NPO法人ひむか維森の会の松岡明彦会長。この会は12年前に業界の社会的地位の向上をめざして設立し、現在94社が加入する。環境や持続性を保つための伐採搬出ガイドラインや「責任ある素材生産事業体認証制度」も立ち上げた。しかし広がる無断伐採は、そうした努力を無にする。

 現状を「腹立たしい」と言いつつも松岡氏は違法行為が頻発する背景を指摘する。「まず新規参入しやすい。技術がなくてもバイオマス用は材質にこだわらないから出しやすい。資金は補助金のほか林業機械はローン、木材市場も前渡金を出してくれる。一方で伐採事業は、山林の仕入れ値も経費も木材の売値も不確定で採算が読みにくい。それに林業機械は1台数千万円する。仕事を切らさず行うため伐採地を確保し続ける必要があるから、怪しい物件でも手を出したくなるんです」

 森林組合の作業班リーダーを務める今西猛さんは、現在の宮崎県の状況を「林業バブル」と表現する。とにかく木材を出せば金になると業者が色めき立っている状態だそうだ。

 かつては森林や林業が好きという人が多かったが、今は「地元の仕事は林業しかないから始めて、稼げるなら何でもやるという人が増えました」という。それが無断伐採を引き起こす温床になっているのかもしれない。

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