Wedge REPORT

2019年7月1日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

他県でも起こりうる
木材増産政策の副作用

 宮崎県は、誤伐・盗伐の相談件数を公表している。28年度は19件、29年度42件、30年度36件だ。これらは氷山の一角だろう。

 どんな対策をとっているのか。昨年末に林業や木材関係の3団体が宮崎県合法伐採推進協議会を設立させ、建築協会やトラック協会、木材市場の関係者が無断伐採の疑いのある現場や木材に気づくと通報する体制をつくろうとしている。だが同じ業界の人間が通報するだろうか。

 なお無断伐採事案を引き起こした業者に関しては、口頭指導から書面指導に切り替え、補助金の交付対象から外す措置も考えているという。

 しかし、これで違法行為は抑えられるだろうか。すでに無断伐採された山の再造林や防災の処置も不明だ。

 宮崎県の林業が曲がり角なのは間違いない。木材生産量は生長量の実質9割近くに達しており、持続性も疑われている。若手林業家は、誰もが「今のやり方ではいつまでも続かない」と不安を口にしていた。

 国は「林業を成長産業にする」と繰り返し木材の増産を声高に唱えている。昨年は森林経営管理法の制定、今年は国有林野管理経営法改正と民有林・国有林ともに伐採を進めやすくした。宮崎県はその先頭に立つ〝優等生〟だ。

 だが木材増産政策の副作用として登場したのが盗伐である。これが全国に広がる可能性は十分にある。

 この問題の対策でも宮崎県が先頭に立てるのか問われている。しかも今や違法な伐採による木材の取引は国際問題となっている。国産材の中にも違法木材が混ざっているとなると、輸出に響くだけでなく大きな非難を受けるだろう。

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◆Wedge2019年7月号より

 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 
 

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