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2019年10月1日

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ドナルド・トランプ米大統領への弾劾調査に着手した野党・民主党は30日、トランプ氏個人の顧問弁護士ルドルフ・ジュリアーニ氏に対して、ウクライナとのやり取りに関する書類提出を命じる召喚状を送付した。民主党は、トランプ大統領がウクライナの大統領に自分の政敵について捜査を要請したを問題視し、弾劾調査を開始した。

連邦下院は昨年秋の中間選挙によって、民主党が多数を占める。下院の情報委員会、外交委員会、監督・政府改革委員会の委員長3人(いずれも民主党)は30日に連名で、ジュリアーニ弁護士に召喚状を送り、10月15日以降の通信内容をすべて提出するよう命じた。

トランプ氏は今年7月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対して、来年の大統領選で民主党候補になる可能性が有力視されているジョー・バイデン前米副大統領とその息子について、汚職疑惑で捜査するよう電話で要請した。トランプ氏はゼレンスキー氏に、バイデン親子捜査についてウィリアム・バー米司法長官やジュリアーニ弁護士と連携するよう求めていた。

米大統領が政敵についての捜査を外国政府に要請した電話の内容に、「深刻な懸念」を抱いた情報機関の内部告発者が、情報機関監察総監に懸念を伝えた。この際の書簡と上下両院に宛てた書簡のほか、後にホワイトハウスが公表した部分的な通話記録から、このことが明らかになった。内部告発者は中央情報局(CIA)の職員だと、複数の米メディアが報じている。

大統領の弁護士が働きかけ

ウクライナへの捜査要請については、すでに根拠なしとして否定されていたバイデン親子の汚職疑惑を捜査するよう、ジュリアーニ弁護士もウクライナ検察に働きかけていた。ジュリアーニ氏自身がこれを認めている。

ジュリアーニ氏は9月19日に米CNNに出演した際、自分がウクライナにバイデン氏の捜査を依頼したかどうかについて、いったん否定してから「もちろんそうした!」と肯定し、発言が矛盾していると指摘されるとそれを否定していた。

これについてジュリアーニ氏は、自分は「巨大な贈収賄の仕組みにジョー・バイデンがわずかにでも関与したかもしれないという告発が、自分の依頼人(トランプ氏の意味)に関係する」ため、ウクライナに調べて欲しいと頼んだのだと説明した。

https://twitter.com/axios/status/1174855025048375296

3委員会の委員長たちは召喚状で、「こうして明白に認めたことに加え、最近では自分が数々の証拠を手にしていると発言している」とジュリアーニ氏に対して指摘。「テキストメールや通話記録、その他の連絡内容の記録をあなたは持っているという。このことから、あなたは単独で動いていたのではなく、他のトランプ政権関係者がこの計略に関わっていたかもしれないとうかがえる」と書いた。

ジュリアーニ氏とホワイトハウスはまだ召喚状についてコメントしていない。ただしジュリアーニ氏は29日、米ABCニュースに対して、自分はアダム・シフ下院情報委員長に「協力しない」と話していた。トランプ氏は29日、シフ委員長を「国家反逆罪で逮捕するか?」などとツイートしているしたほか、自分を支持する牧師を引用し、「もし民主党が大統領の解任に成功したら(中略)この国には内戦のような分断が生じ、この国は二度と回復できない」という内容をツイートした。

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豪政府にも捜査要請

7月25日の電話会談については、マイク・ポンペオ国務長官も同時に内容を聞いていたことが、30日に明らかになった。下院民主党はすでに27日に、ポンペオ長官に証拠提出の召喚状を送っている。

さらに30日には、トランプ氏がオーストラリア政府にも捜査支援を要請していたことが明らかになった。オーストラリア政府は、トランプ氏が自分のロシア疑惑についてスコット・モリソン豪首相に捜査協力を求めていたと認めた。トランプ氏は、ロバート・ムラー特別検察官がロシア疑惑捜査を担当するに至った経緯を捜査するため、バー司法長官と協力するよう豪政府に依頼したという。

この際の電話会談の通話記録については、ホワイトハウスが重要機密扱いにして秘匿(ひとく)したと伝えられている。ウクライナ大統領との通話記録についても、同じように処理したことが、内部告発者の手紙で明らかになっている。両方の通話内容には安全保障上の機密は含まれていなかったものの、重要機密用に暗号化され他のネットワークにつながっていないデータベースに保存するよう、ホワイトハウスの法務顧問たちが決定したとされている。

バイデン親子についてウクライナは

トランプ氏とその支持者たちは、バイデン氏が副大統領だった2016年当時、ウクライナの民営ガス会社ブリスマの汚職疑惑について捜査していた当時のヴィクトル・ショーキン検事総長の解任を求めたのは、ブリスマの役員だった息子ハンター氏を守るためだったと主張している。

バイデン氏は当時、複数の欧州首脳や国際通貨基金(IMF)首脳などと共に、ショーキン検事総長は汚職摘発に及び腰だと批判し、解任を求めていた。ショーキン氏の後任となったルツェンコ氏はその後、10カ月にわたりブリスマを調べたが、捜査はそこで終わった。

先月辞任したルツェンコ前検事総長はBBCのジョナ・フィッシャー・キエフ特派員に対して、ブリスマを捜査する予定はなく、ハンター・バイデン氏を捜査するなら「それはアメリカの管轄下にある」と述べた。さらに、ブリスマ社による「横領疑惑」があったとしても、それはハンター氏が2014年に同社役員になるより「2、3年前のこと」だと話した。

ルツェンコ氏はさらに、トランプ氏個人の弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏と会ったことを明らかにした。ジュリアーニ氏は、ウクライナでバイデン親子を捜査することは可能か尋ねてきたという。

「あなたに答えたのと同じ返答をした。私の管轄ではないと」と、ルツェンコ氏はフィッシャー記者に話した。「アメリカの司法管轄下の事案になるだろうと伝えた。もし、情報提供の要請をすれば、公式情報はすべて提供するが、ウクライナの司法管轄下にある事案ではない。それが私の答えだった」。

バイデン親子に対してウクライナ当局が何か証拠を手にしている可能性があるかについては、ルツェンコ氏は「ウクライナ法に関係しない(事件について)何もできない」と答えた。

内部告発者について

トランプ氏は内部告発者を、民主党支持者で「スパイのようなもの」と呼び、かつてアメリカがスパイを処刑していた時代に言及するなど、強く非難している。その一方で、下院情報委員会で証言したジョーセフ・マグワイヤ国家情報長官代行は、内部告発者は「誠実に行動」し、「正しいことをした」と述べていた。

共和党支持者の間では、内部告発者が自分がトランプ氏の電話を直接聞いていたわけではないと認めていることを、伝聞をもとにした告発にすぎないと問題視している。またトランプ氏は30日、「告発者の報告の直前に告発ルールを変えたのは誰だ?」と大文字でツイートした。

こうした中で30日には、この内部告発者が「深刻な懸念」を最初に伝達したマイケル・アトキンソン情報機関監察総監が異例の声明を発表し、政府の内部告発規則が最近になって変更された事実はなく、伝聞をもとに内部告発してはならないという決まりもないと反論している。声明はさらに、今回の告発には告発者が直接知った情報も含まれており、伝聞情報とあわせて総合的に、内容は緊急で深刻だと判断したと述べている。アトキンソン氏はトランプ政権によって任命された。

アメリカには連邦政府による不正や国民の安全を侵害する行為などを告発する者を保護する1989年の内部告発者保護法があり、内部告発をした人物を特定しようとしたり、処罰などで報復したりすることは禁じられている。

上院はどうするか

合衆国憲法が定める大統領の弾劾手続きでは、下院が調査の後に単純過半数で弾劾訴追を可決した後、上院が弾劾裁判を行う。上院議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領を解任できる。

現在の下院では、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、弾劾訴追が成立する可能性は高い。

一方の上院は、定数100議席のうち共和党が53議席を占める。解任の動議成立には多数の共和党議員が造反する必要があるため、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

その一方で、トランプ氏を支持してきた共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は30日、もし下院が大統領を訴追した場合、上院としては規則上、弾劾裁判を開かないわけにはいかないと表明した。

(英語記事 Trump impeachment: Lawyer Rudy Giuliani subpoenaed for documents

提供元:https://www.bbc.com/japanese/49888649

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